原点みたいなもの | 谷口礼子オフィシャルブログ「じゃこのおもしろいこと」

悲しみとか理不尽とかそういう勢いに任せて、感情をブログやメールにぶつけてしまったことは、以前よくあった。

家族のことをブログに書いたこともある。

それを読んだ父に「お前は作家かなんかのつもりかもしれないけど、こっちは迷惑だ。人のこと馬鹿にして性格が悪い」と怒られたり、

なぜかその時一緒に仕事をしていた脚本家に、ブログに書いた私の家族とのやり取りを許可なくそのまま脚本にされてしまったり。それはとても信じられないことだった。

 

でも、文章にすることで自分の気持ちを整理したり、たまには人と分かり合えたり、ブログにはとてもお世話になった。ミクシィ日記にも。

今は文章を書くことが、小さくとも自分の生業になっているので、感情をドカンとぶつけるようなそういうことは減った。なにか具体的な出来事と自分の感情を直接的に絡めるより、すこし距離をとってから、それでも表現したいと思えるものだけ出すのがちょうどいいと思っている。

単純にすこし大人になれたのかもしれない。

 

演劇を始めた時には、「ファンもいないし求められてもいないのに演劇をやるなんて頭がおかしい」と言われて、わたしは人に求められてもいないのに自己顕示欲だけ強い頭のおかしい人間なのか、とショックを受けながら、でも、自分を表現することへ向かう欲求はどうしてもとめることができなかった。親の助けを借りて演劇をやったら自分が自分じゃなくなりそうで、だから自分のお金で俳優教室に通って、その先もできるだけ自分一人でやろうと思った。

孤独だったし、がむしゃらだったし、折れたくなかったし、後に引けなかった。

後に引いたら自分が自分じゃなくなってしまう。それが怖くて、怖くてたまらなかったなあ。

 

さみしくて、人とつながれる演劇が大好きだった。知らない自分に出会える演劇も。

稽古に行けば毎日誰かと会える。思ったことを言える。身体を動かして踊ったり歌ったりしていい。

そして、それをしたら、一人でもふたりでも、喜んでくれる人がいる。わたしは、子どもの頃から、人に喜んでもらうのが本当に好きだった。

 

わたしは職業が役者なのではなく、性質が役者なのだからそれでいいと最近はそう考えることにした。職業がライターなのではなく、性質が物書きでもあって、それが仕事になろうがなるまいが、私は役者であり物書きだ。たまにいまだに「売れたいんですか」と聞かれるけど、はっきり言って売れたいとは思ってない。でも、続けたいとは心から思っている。だから、もしもその人が、続けるには売れることが必須で、私を売ってくれるというなら「売れたい」と言うかもしれない。もちろん、今のままいつまで続けられるかわからないし、できるならもう少し仕事としてできる時間を増やしたいと思って毎日を過ごしてはいる。

 

とはいえ、いま。女優とライターの仕事は両立できないと釘を刺されながらも、応援してくれる方がいるから、読んでくださる方や観てくださる方がいるから、なんとか、わたし、やっています。

本当に感謝することばかり。

ありがとうございます。

 

文章の仕事はブログじゃない。

だけど、ブログはブログだから、たまにはこんなことも書いてみる。

原点みたいなものだ。