谷口礼子オフィシャルブログ「じゃこのおもしろいこと」

谷口礼子オフィシャルブログ「じゃこのおもしろいこと」

俳優・ライター・旅人。オリオンズベルトグローバル所属

わたしは、やたらと音楽を歌詞まで暗記する子どもでした。

 

童謡やなんかも、2番3番まであるのは今でもだいたい全部覚えていますし、校歌も、転校する前の小学1~4年生の時に通った学校のもの、小学4~6年で通った学校のもの、中高の校歌、とほとんどそらで歌える気がします。

大学の校歌なんてほとんど、スポーツの応援くらいでしか歌うタイミングはありませんが、「都の西北」も「紺碧の空」も歌えます。たしか、入学したときに、CDをいただいたような気がして、それを律義にかけてみたら憶えてしまったのでしょう。

 

 

「紺碧の空」。

いまの朝の連続テレビ小説のモデルになっている古関裕而さんの名曲です。

 

「紺碧の空」を聞いて、私の脳裏に浮かぶのは、早慶戦の風景でも応援団でもなくて、文学部のある戸山キャンパスの中庭にそそぐのどかな陽の光と緑の色です。

 

なぜだか、友人から早慶戦に誘われても、私は行きませんでした。

たぶん、大きな声で汗と涙を流しながら応援するのは私の性にとてもあっていて、

だからこそ、深い沼にはまり込みそうな気がして行けなかったのかもしれません。

 

 

早慶戦の日は、キャンパスから人が消えます。野球だろうがラグビーだろうが。

授業に出ても友人はみんな早慶戦に出かけているので教室はガラガラ。

先生もそれを知っているから、のんびりしています。

よく晴れて、陽射しがまぶしい、いい陽気の日ばかりでした。

窓ぎわに座って授業を受ける私にも陽射しがさしていました。

 

窓から中庭の樹々がよく見えました。緑に陽が当たって透けるようでした。

この、のどかに流れる時間と同じ瞬間に、同じ空の下で歓声が沸き上がり、

いつもなら同じ教室にいる友人たちが肩を組んだりしながら、歌ったり声援を送ったり、

しているのかなあ、と思うと、不思議な気持ちでした。

 

それだけでわたしの心の中では「紺碧の空」が流れ、

昂揚したような感動したような気持ちになりました。

まったく、その場に出かける必要もないほど、もう勝手に心の中は早慶戦なのでした。

 

 

いや、本物の早慶戦はそんなモンじゃないよという先輩もおられるかと思うのですが、

そこは、わたしにとってはそれがなんだか紛れもなく早慶戦で、

みんなとうたったのではない「紺碧の空」が、自分一人の記憶だけではない記憶を連れてくるような気がします。

 

「覇者、覇者」とほめたたえる最後の歌詞は、実はあまり好きではないけれど、

世代を超えて、この歌を歌った人たちとわたしは「紺碧の空」の下でつながっていて、

たとえ覇者になれなくても、なにかに打ち込んで友人と出会い交流した青春の時は、

かけがえのないものだったなあと、今ではまぶしく思い出します。

 

伝統ある学校に通えたことのありがたさです。