自分の目の前で引き返すべくUターンを試みた某高級RV車が立ち往生した姿というのは、それなりにショックで、それまでは「このまま立ち往生して明日の朝刊ニュースのネタになるのは、イヤだなぁ…」なんて、危機感を抱きつつもどこか楽観的に考えていたのですが、その姿を見て「これはマジでヤバいぞ…」と思うようになりました。
そういう危機感を感じたカミさんや息子も、何かしたほうがいいんじゃないか…ってなことで、前の様子を見に行ったり(息子は野次馬精神ですが^^;)、「車を押そうか?」とか「タイヤの下の雪を掘ろうか?」なんてアクティブに動いてくれたのですが、このアイスバーンの中で雪に慣れていない人間(もちろん僕自身も)作業をするのは危険だし、何よりその頃には渋滞にしびれを切らしたアイスバーンの坂道をものともしない後続車が反対車線をガンガン登っていくようになったため、車外にいること自体が危険な状況になってきたため、色々やろうとする気持ちはありがたいのですが、車内に戻ってもらいました。
さて。どうしたものか…。
まず、立ち往生した場所から先は更なる山道と急カーブが連続するため、同じトラブルに見舞われる可能性が極めて高いことから、このまま先に進むこと(もっとも、車が動けば…の話)は断念。雪まつりに行くこと自体も、今の時点では諦めてもらいました。(このあたりは、小6にもなるとさすがに聞き分けが良い^^)
次は、この状況からどう脱出するか。
ある程度の勢いがあれば、あるいは進むことができたかもしれませんが、勢いよくアクセルを踏んだところで進む保証もなければ、前には例の某高級RV車が斜めに停まっているので、ハンドル操作を誤ったら、その横っ腹に突っ込むことになる…。却下。
次。チェーンを巻く。これが一番絶確実。現に僕の車両の前後でそうしてる。でも…この車にはチェーンなんて積んでない(そもそも持ってないし…--;)。仮にチェーンを入手しようにも、最寄りの市街地は相当先で徒歩では行けないし、それこそ危険。却下。
前に進めない以上はUターンして帰るしか、ない。
目の前では某高級RV車がスタックしたまま。そのドライバーもなんとか進もうとしているのですが、もがけばもがくほど動けなくなる悪循環に。それを見かねたカミさんが「前の車が動かないとこちらも進めないし気の毒だから、(前の車を)押してあげようか…」と提案したのですが、この足場の悪い状況で押したところで動かせないだろうし、何よりも押して予期せぬ方向に滑りだしたら、押した人間が危ない。カミさんの気持ちもわかるし、前のドライバーさんにも申し訳ないのですがその意見は、却下。
同様の理由で、この車を押してもらうのも、却下。自分の家族を怪我させた…なんて悔いても悔いきれない。
とりあえずもう一度、じんわりとアクセルを踏んでみましたが、やはり車は動かない…。
“他にUターンする方法は…?車がコントロールできる状態…こちらのアクセルワークとハンドル操作にちゃんと従ってくれる状態…にさえなってくれれば…。”
そんなとき、ふと思い出したのが、20年以上前に通っていた自動車学校での教官との会話。何のきっかけでその話になったのかは覚えていないのですが、「自動車のギヤの中で、一番パワーを持っているのは、実はバック・ギヤなんだよ」なんて話を聞いて「へ~、そうなんだぁ…」なんて非常に印象に残っていたんです。
実際のところはどうなのか…?ましてそれはミッション車の話。オートマもそうなのか…?は知りませんが、少なくとも僕自身はその知識(?)のおかげで、過去に2度ほど“スタック状態”から脱出した経験もあり、試してみる価値はありそうです。
“よし。斜め後ろにバックしてみよう”
〔シミュレーション開始!〕
まずは、現状確認。
後ろは?非常に幸運なことに後続車(軽自動車)との車間も車2台分くらい空いており、かつ、僕らと同様に、彼らには不幸なことに前にも後ろにも…という感じで停車中。
これだけ車間があれば、後続車にはぶつからないし、万が一滑ってしまっても、これだけの距離があれば、後ろのドライバー達は逃げられるだろう…。
続いて、前。相変わらずスタックしたまま。その状態で滑り落ちてくる…あるいはドライバーが自棄になって闇雲に動かすことを一番恐れていたけど、そんな様子はなし。
某高級RV車との車間も車2台分。このままでもUターンは支障ないが少し下がれば、前の車との車間も更に余裕ができるから、Uターンのスペースがより広く確保できる。
次は車の操作。ハンドルを斜めに切りギヤをバックにして軽くアクセルを踏む。この状態で、自分が意図した方向に意図した速度で動くか=車がコントロールできているか?を確認。
これで、動かなかったらアウト。でも、動いたら…?
少しでも坂を上らなくてもすむよう、車体が坂に対して垂直に近くになるよう車を誘導すべく、何度か切り返す。
とにかく焦らない。車が持ってるパワーをじっくりタイヤに伝えるようなイメージで、アクセルもハンドルもじわじわと動かす。
〔シミュレーション完了〕
では、実行。
ハンドルを斜めに切りギヤをバックにして軽くアクセルを踏むと…こちらの意図したとおりに車が動いた!
ギヤをローに戻してアクセルをじわり。
…動かない。
落ち着いてもう一度。先ほどより角度をつけて斜めにバック。車はちゃんと意図する方向に動いているので、コントロールできてる。この時点で車体は、坂に対してほぼ垂直に。
ギヤを再びローに戻し、アクセルをじわり。
動いた!
さらにジワリとアクセルを踏み、ハンドルをゆっくりと回す。車は僕が意図した方向に、意図した動きで進む…。
立ち往生の車列から、ようやく脱出し、車内には安堵の声が…。僕の方もようやく緊張から解放されました(^^)。
※こう書くと運転技術でこなした感じですが、実際のところはバックして変わった車の場所が、運よくレスタイヤが雪を掴めるようなポイントに行けたんだと思います。つい直近まで雪が降っていたという情報を持ちながら、相応の準備をしなかった甘さは、多いに反省するところです。