*フィッシャー・ディスカウとシューベルト歌曲(33) -鳩の使いー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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今日は歌曲集「白鳥の歌」の終曲、

「鳩の使い(Die Taubenpost)」

です。

詩は、ヨハン・ガブリエル・ザイドル。
これはおそらくシューベルトの最後の作品であり、明快簡素な
通作形式で、美しく親しみやすい、シューベルトが目指したもう
1つの流れを代表する傑作であると思われます。

人が誰でももつ心の「憧れ」を「伝書鳩」に擬した詩の内容も
シューベルトの最後を飾るのにふさわしい作品ではないでしょ
うか。

今日は、DFDとギューラの歌唱で聴いてみます。


Die Taubenpost    鳩の使い
Ich hab' eine Brieftaub in meinem Sold,
Die ist gar ergeben und treu;
Sie nimmt mir nie das Ziel zu kurz,
Und fliegt auch nie vorbei.


僕は一羽の伝書鳩を飼っている。
とっても従順で誠実な鳩だ。
目的地にすぐ届けるし、
通り過ぎてしまった事も無い。


Ich sende sie vieltausendmal
Auf Kundschaft täglich hinaus,
Vorbei an manchem lieben Ort,
Bis zu der Liebsten Haus.


僕はこの鳩を何千回も送った。
いつも便りを届けに、
たくさんの好きな場所を越え、
あの愛する人の家へと。


Dort schaut sie zum Fenster heimlich hinein,
Belauscht ihren Blick und Schritt,
Gibt meine Grüße scherzend ab
Und nimmt die ihren mit.


そこで鳩はこっそりと窓を覗き込み、
彼女の視線を捉え、足音を聞きつけ、
僕の挨拶を戯れに伝えて
彼女の返事を持って帰る。


Kein Briefchen brauch' ich zu schreiben mehr,
Die Träne selbst geb' ich ihr:
O, sie verträgt sie sicher nicht,
Gar eifrig dient sie mir.


僕はもう何の返事も書く必要がない。
この涙を鳩に与えてやるんだ。
おお、鳩は涙を運びはしないが、
本当に熱心に僕に尽くしてくれる。


Bei Tag, bei Nacht, in Wachen, im Traum,
Ihr gilt das alles gleich;
Wenn sie nur wandern, wandern kann,
Dann ist sie überreich!


昼も、夜も、うつつも、夢も、
鳩にとってはみな同じ事。
ただ旅する事、飛び立つ事ができさえすれば、
鳩にはそれで十分なんだ!


Sie wird nicht müd, sie wird nicht matt,
Der Weg ist stets ihr neu,
Sie braucht nicht Lockung, braucht nicht Lohn,
Die Taub' ist so mehr treu!


鳩は飽かず、疲れず、
行く道はつねに新しい。
鳩は誘惑にもかからず、報酬も欲しがらない。
この鳩はそれ程にも忠実なんだ!


Drum heg' ich sie auch so treu an der Brust,
Versichert des schönsten Gewinns;
Sie heißt die Sehnsucht! kenn ihr sie?
Die Botin treuen Sinns?


だから僕も鳩を信じて胸に抱いては、
この最も美しい獲物を大切にする。
この鳩の名はあこがれ!ご存知ですか?
この誠実な心を持った使者を?


フィッシャー=ディスカウ(ピアノ:ジェラルド・ムーア)


ヴェルナー・ギューラ(ピアノ:クリストフ・ベルナー)