問題3の3
ここの単元は、「市場の失敗」である。これを説明するうえで必要な考え方が、「市場機構」である。これは、「市場メカニズム」ともいう。少し抽象的に言うと、市場の働きによって価格や数量がうまく調整されるということ。具体的に言えば、モノの数量や価格は、適当に決めてもやがて勝手に需要と供給が均衡するように動くということ。前回に説明した、生産量が増加したことによって大根の価格が下がるといったときに、「いつもは一本100円で売っているから、今日は一本80円だ」としよう。しかし、この価格で大根を売り切れるとは言えない。しかし、売れ残るのは損になるので、もっと下げるようになる。そうすると、やがてちょうどいい数量と価格に設定するようになる。やはり、売り手側は、売れ残らないように考えるから、自然と価格が均衡点に向かう。さらには、次の月に大根が不作になれば、今度はすぐ売り切ってしまうから、値段を高くすることで、閉店でちょうど売り切るように調整する。このように、大根は売り手側がどんな適当な値段にしようとも、価格や数量は自然と均衡点に向かうように調整される。このことを市場機構という。このような価格の自動調整機能が働かない状態になる事を市場の失敗という。
市場の失敗は、「経済の外部性」「独占・寡占」「公共財」の3つがある。
「経済の外部性」という言葉は大学で習うことば。外部性とは、市場の外部から来る影響のこと。そして、「外部経済」とは外部要因のプラス面、「外部不経済」とは外部要因のマイナス面だ。
外部経済・・例えば、新駅が完成しその近くの喫茶店の売り上げが増えるとか、突然やってくるブームなど。新駅の建設は、市場の中ではコントロールできない。ブームも、突然やってくる。もし、誰かが意図的に起こしたとしても、市場から見たら外部からやってくるものだから。
外部不経済・・例えば、台風洪水地震といった災害や工場からの排水による公害といったもの。台風によって被害を被れば、市場にマイナスをもたらす(業界によってはプラスになるかも。そういったときはその業界にとって台風は外部経済だね。)。公害は現在汚染者負担の法則(PPP、Pollution Pay Principal)によって、過失がなくても企業が損害賠償を支払わなければならないので、マイナス面になる。
「独占・寡占」
独占は、1つの企業が1つの市場をすべて支配下に置くこと。寡占は少数の企業が1つの市場を占めていること。自由経済が進み、ついには弱肉強食の状態になると、力のある企業は規模を大きくしていく。利益率が同じなら、規模を大きくすればするほど儲けが大きくなるからである。言い直すと、1つの商品で10円の儲けが出るなら、10個生産すれば100円の儲け。1万個生産するなら10万円の儲け。1億個生産すれば10億円の儲けだね。そうしていくうちに、1つの企業は1つの市場を占めてしまう。こうすると今度はライバルがいなくなるので、値段を高く設定するようになる。大根市場を支配すれば、1つ100円だろうが1000円だろうが、ライバルがいないので自由に値段設定ができる。大根が欲しい主婦は、泣く泣く1000円の大根を買わざるをえない。ちなみに、代替品といって大根に代わる商品があれば、あまり高い値段設定ができない。大根に対してはカブとかラディッシュとかあるでしょう。しかし、現在代替できないものがある。それは、スマートフォンだ。これは、少数の企業が占有している寡占状態だ。本体の値段・付属品の値段・月費用、いい値段するよね。これは寡占状態によって新たなライバルが出てこない。代替品もない(まさかガラケー使うかい?)。ということで値段が高いと言われている。最近、楽天の参入が取りざたされているのは、ライバルが出現することによって、価格競争が始まり、適切な値段まで下がる可能性がある。
「公共財」
公共財とは、道路や信号、公園といった税金で作られたものと考えてもらっていい。これらは、自動調整が効かないというよりは、「市場で適切に供給されない」と表現される。たとえば、道路が市場によって供給されたらどうなるか。私が道路建設会社を作って、多額の資金を使って、大阪市の天王寺より北側の道路をすべて買って、道路を作り直したとしよう。それを見た私の弟が、天王寺より南側の道路をすべて買い、同じように新たに道路を作り直した。北側の道路は私の会社のものなので、交通料が発生する。一歩でも家から出ようものならそのたびに使用料が発生する。そして、儲けを多くするため人が通らないようなところには道路は建設しない。なので少しでも狭いところや使用料が取れないところは廃止にしていく。さらに、例えば平野区から学校まで来ると天王寺を通るので、家を出るときに弟の会社にお金を払い、駅を出る時に私の企業にお金を払い、といったようにいちいち使用料が発生する。これでは道路はやってられん。ということで、税金で運用することになったんだ。公共財は、「多くの人が同時に使用できる→非競合性」「誰であっても利用を制限できない→非排他性」という性質がある。前者はスペースある限りどこでも使用できる。後者は税金払ってなくてもだれでも使用できる。という意味である。
ようやく問題の解説へ
問2②③ 独占禁止法・公正取引委員会はセット。行政分野の復習で上級編の解説をすると、公正取引委員会は内閣の下に位置する。それで?と思った君は少し考えてみよう。独占した企業がいたとして、公正取引委員会は、独占禁止法でもってその企業に課徴金(かちょうきん)を科す。・・・何か気付いたかな?
そう!なんと法律違反によって懲罰を決定するのは、行政ではなく司法であるはず。公正取引委員会は内閣についているので行政のはず。しかし、まるで裁判所のようなことをしている。「これは憲法違反だ!!」・・・とはならない。このような行政の一部が裁判所のような、罰則を決定することを「行政による裁判(司法行政権)」といい、司法の独立の例外として扱われる。もし、独占と疑われる企業が公正取引委員会の決定に不服な場合は、裁判所に訴えることが出来る。最後は裁判所にやってもらう。公正取引委員会は司法の補助をしているといえるね。なんと難易度の高い解説か!
問3 b 前述した、独占や寡占になると価格は「下がりづらい」。この「下がりづらい」ことを「下方硬直性」という。お堅い言い方です。 c d は前述しました。
問4(1)コンツェルン
これは持ち株会社ということとセットで理解しよう。例えば「~ホールディングス」という会社があるよね。これは、三井や三菱といった旧財閥系に多いんだけど、複数の産業に出資している会社だ。例えば、「三菱」という会社は何をしているだろう。後で調べてみればわかるが、保険会社や車、銀行、文房具と多岐にわたっている。こうやって多くの産業を牛耳ろうとすることをコンツェルンという。特に法律に反するわけではない。
(2)トラスト
これは、合併や買収を行うことで、その市場のシェアを上げていくことをいう。ある程度は問題ないが、独占禁止法に触れるレベルになってくるとアウト。
(3)カルテル
これは、例えばドコモとAUとSoftBankが陰でこそっと値段の調整をしていた場合である。意図的にこれらの企業が協調して、値段を決定していたら、寡占状態が実質は独占状態になるので、強い「価格の下方硬直性」がおこる。そうすると、君たちは払う必要のない使用料を支払うことになる。どうする?明日から「どのケータイ会社も月々の使用料は2万円です」なんてなったら。代替できる人はいいけどなかなかできる人はいない。
これは、完全アウト。絶対に独占禁止法に引っかかる。