SAM COOKEは言わずと知れたソウルの神様、というかオリジネーターですね。若干19歳からゴズペル界で活躍しその端正なルックスと洗練された唯一無二の歌唱で一躍黒人界の人気者になった彼は後にポピュラーミュージック界に「YOU SEND ME」で全米No.1という華々しいデビューを遂げました。その後「ソウルミュージック」というジャンルを確立したものすごい歴史的人物。
まぁ何がスゴイのかって言うのは彼の歌声もそうですが、彼は曲を作り、そして歌い、さらにその楽曲の著作権を彼自らが管理してたということ。当時まだ黒人には公民権はなくこういったケースは極めて珍しかったのです。
そして彼の歌声は人種やジャンルを問わず後の様々なボーカリストたちに多大なる影響を与えました。OTISも数曲カバーするなどスタイルは違えど影響は計り知れない。私はこのOTISの影響で遡って聞くこととなるのですが、一聴しただけで愕然としました。それまで個人的にソウルというのはパワフルなイメージが付きまとっていたのですが彼の声を聞いて考え方がまるで変わりました。繊細さの中に力強さ、リズムとメロディの調和、そして彼にしか表現できないグルーヴ。その一つひとつを取っても彼より上手いソウルシンガーは彼の歌声を聞いて以来今も誰一人といません。
そんな天才の最期はモーテルで売春婦に拒絶されたため激昂し、抑えることが出来なかった売春婦はモーテルの管理人に助けを求めその管理人に射殺されたという悲惨そのものでした。天才というのはそういった凡人には理解できない行動や性癖が良く取り沙汰されますが・・・・・そんなわけで彼の死後数年はあまり触れられることはなくその偉業だけが語られ、風化した現在はロックの殿堂にもなるなどしてその功績が正当化されることとなりました。
彼の楽曲は現在ベスト盤CDで聴くのが手っ取り早いのですが、それでも大きく2種類出ていまして(RCA盤とABKCO盤)10年にも満たないキャリアの彼の楽曲をその2つを手に入れないと網羅できないというもどかしい状況にあります。その元凶を作ったのがSAM本人の著作権管理にあったらしいのです。何でもデビュー当時のKEENレーベルからRCAレーベルへ移籍する際その楽曲管理契約も同時にしたそうなのですがその年数が1964年から30年間という期限付きだったそうでそれ(1994年)以降はRCAの権限だけではCDが出せない楽曲が数曲発生した、ということだそうです。つまり初期のほとんどの楽曲をRCA側が、晩年の大半の楽曲をABCKO側が権利を持っているおかげでこんないびつな形になっているのですね。とりあえず現在入手しやすいABKCO盤のほうがデビューから最期までほぼ満遍なく入っていますがこれでもやはり完全ではないのですよ。いつかストーンズみたいにオールタイムのベスト盤が出ることを望みます。
今日のBGM:WONDERFUL WORLD (SAM COOKE)