初の迎撃試験成功!SM-3ブロック2Aとは何か | 因幡のブログ

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 日本時間の2月4日、ハワイ沖の海域において日米共同開発の新型迎撃ミサイルSM-3ブロック2Aが初の迎撃試験を見事成功裏に終えました。ではこのミサイルは、一体どんなものなのでしょうか。

( 画像 raytheowm.com http://www.raytheon.com/capabilities/rtnwcm/groups/public/documents/image/rms12_sm3_infographic_download.jpg より  SM-3ブロック2Aが従来品よりだいぶ外見が異なるのがわかる)
性能は既存ミサイルの倍
 SM-3ブロック2A最大の特徴は、その長大な射程距離と高い射高です。現在海上自衛隊や米海軍で使用されているSM-3ブロック1A/1B(海上自衛隊は1Aのみ)は、射程が約1000kmで射高が約500km程度とされています。ブロック1Bはこれより多少射程が伸びていると言われていますが、大して違いはありません。しかし今回迎撃試験に成功したSM-3ブロック2Aは、射程が約2000kmで射高が約1000kmあるとされています。つまり単純に言えば、既存のSM-3に比して性能が倍になったと言えます。

ノーズコーンもグレードアップ
 またミサイル先端には、弾道ミサイルに直接ぶつかって破壊するためのキルヴィークル(通称KV)が収まっていて、それを保護するカバー「ノーズコーン」と呼ばれるものがあります。従来はこのノーズコーンをミサイル迎撃の最終段階において取り外す際に、SM-3を一度下に向けるお辞儀のような動作をしてノーズコーンを取り外していました。しかしこれは一度捉えた敵のミサイルから一旦目をそらすことになり、非効率的でした。
 そこでこのブロック2Aではクラムシェル型と言って、ノーズコーンが真ん中からぱかっと左右に開くように変更したのです。これによりわざわざお辞儀をして敵のミサイルから目をそらすことなく、ジッと見つめたままノーズコーンを取り外す事が可能になりました。
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(昨年の防衛装備庁技術シンポジウムで展示されたSM-3ブロック2Aのノーズコーン、先端に分かれ目となる線が入っているのがわかる。筆者撮影)

ブロック2Aが日本にもたらすものとは
 SM-3ブロック2Aはアメリカのみならず、当然日本の海上自衛隊にも配備されます。先述した通りブロック2Aの性能は従来品の倍近いため、配備することによる三つの利点があります。
 まず一つ目は、射程が2000kmもあるためにイージス艦1隻で日本の広い範囲を防護できます。射程が2000kmということは、イージス艦を中心に半径2000km/直径4000kmの円を描く事ができ、この円に日本列島がすっぽり収まるわけです。二つ目は、射高が1000kmと高いために、従来は対応が難しかったわざとミサイルを高く打ち上げて手前に落とすロフテッド弾道に対応出来るようになります。そして三つ目は、北朝鮮が持つ中距離弾道ミサイル「ムスダン」などが日本を飛び越えて、ハワイやグアムを攻撃しようとした際に、日本が集団的自衛権を行使してこれを防護出来る能力を備えられます。元々ブロック2Aはこうした中距離弾道ミサイル(射程3000〜5500km程度の弾道ミサイル)を標的に開発されたミサイルで、日本はこうした弾道ミサイルにも対処できる能力を持つことになります。

ブロック2A搭載の条件
 残念ながら、このブロック2Aは全てのイージス艦に搭載できるわけではありません。これを搭載するためには、イージス艦の能力としてベースライン9C2/BMD5.1というものが必要になります。ベースラインはパソコンでいう基本ソフト(OS )、BMDはアプリケーションと思って頂ければ結構です。つまりこれより古い型の能力のイージス艦には、ブロック2Aは搭載出来ません。
 では日本の場合はどうでしょう。残念ながら現在BMD任務についているこんごう型イージス艦4隻は、全てこれより古い能力の艦です。しかし将来日本がもつ27・28DDGという2隻の新型イージス艦と、現在保有しているあたご型イージス艦の能力改修が完了する2020年代には、日本はこれら4隻のイージス艦がブロック2Aの運用能力を備えることになります。そしてブロック2A自体も、2021年度から日本に調達予定です。