法的な意味での「戦闘行為」とは? | 因幡のブログ

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 最近巷で話題の戦闘行為という単語、一般的なイメージとしては「銃をバンバン撃ち合っている」という感じではないでしょうか。しかし日本政府はキチンと戦闘行為についての定義を示しているのです。
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(例えば相手がこのような戦車を持ち出して来れば、それは戦闘行為になるのでしょうか?撮影・筆者)
日本政府による定義
 日本政府としての「戦闘行為」の定義は、平成14年2月5日に出された「衆議院議員金田誠一君提出「戦争」、「紛争」、「武力の行使」等の違いに関する質問に対する答弁書」(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b153027.htm)において明らかにされています。同答弁書によれば、戦闘行為とは「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう」と定義されています。加えて国際的な武力紛争とは、「国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いをいうと考える」と定義されています。
 これらをまとめると、戦闘行為とは「国家または国家に準ずる組織の間で起きた武力を用いた争いの一環として行われる、人を殺傷したり物を破壊する行為」ということになります。ここで重要なのは、戦闘行為は「国または国に準ずる組織」の間でしか起こせないということです。

国の定義とは
 では国または国に準ずる組織とは具体的にどのようなものなのでしょうか。実はこれにも定義があります。まず国際法上の国家の要件については、1933年に署名された「国の権利及び義務に関する条約(モンテヴィデオ条約)」の第1条には
「国際法上の人格としての国は、次の資格を持たなければならない。(a)恒久的住民(b)明確な領域(c)政府、及び(d)他国と関係を取り結ぶ能力」と規定されています。
 また平成24年8月3日に出された「参議院議員佐藤正久君提出国連平和維持活動(PKO)協力法改正論議に関する質問に対する答弁書」(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/180/touh/t180203.htm)によれば、国家とは「国際法上、一般に、一定の領域においてその領域に在る住民を統治するための実効的政治権力を確立している主体」で、国家に準ずる組織とは「国際法上その具体的な意味について、確立された定義があるとは承知していない。他方、従来から、政府としては、国家に準ずる組織について、国家そのものではないがこれに準ずるものとして国際紛争の主体たり得るものとして用いてきている」とされています。
 しかしこの答弁書においての国家に準ずる組織の定義は少し曖昧にも感じます。そこでこれを補足するものとして、平成15年6月4日「第156回国会 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会 第11号」(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/156/0074/15606040074011a.html)における、民主党(当時)の齋藤勁議員の質疑に対する、石破茂防衛庁長官(当時)の答弁を見てみましょう。
国に準ずる者とは何なのだと言われますと、国というのは結局その領土を有しているか、国民を有しているか、若しくは政治体制というものを有しているかというようなことになるのだろうと思います。それを具備してそれは国家だというふうによく言われますし、主権というのはそういうものだと言われることがあります。そのうちの全部か、それとも一部を充足しておる、それは国に準ずる者であり、あるいは国際的には国家としては認められていないが国際紛争の主体となり得るもの、例えばタリバンなんてのはやっぱりそういうものになるんだろうと思うんです。しかし、それが宗教団体のちっちゃなものだったりした場合には、とても国又は国に準ずる者にならないだろう。
 つまり国に準ずる組織とは、「国家ではないが、国家の要件の全部か一部(例えば政治的支配体制や領域や国民)を有しているもの」と言えるかと思います。

つまり戦闘行為とは
 以上から、つまり戦闘行為というのはなんなのかをまとめると、「国家または、国家の要素を一部または全部を有している国家に準ずる組織との間で行われる武力を用いた争いで行われる、人を殺傷したり物を破壊する行為」となります。決して相手が重武装だからとか、戦車による撃ち合いがあるから戦闘行為、というわけではありません。問題は相手が国または国に準ずる組織か、そうではないかなのです。