あらすじ見て買ってあったけどようやく今日の昼休憩から読み始め、面白くて一気に読んでしまった久々の大ヒット。
村田沙耶香「殺人出産」
舞台は100年後の日本(なのかな?)
進む少子化により(物語の中では少子化の理由も別に架空の設定があるのだけど省略)極端に人口の減った100年後の日本は、10人産めば1人殺せる、という「殺人出産システム」を導入。
よって10人子供を産む「産み人」は日本の人口を保つ人として崇められる。
10人の出産を達成し、指名されて殺される「死に人」もまた、みんなのために犠牲になった素晴らしい人、として崇められる。
誰か一人を殺すために長い年月を費やし命をすり減らしながら10人子供を産む、というわけだから相当な執念と殺意が「産み人」には必要なわけで。
そしてこの時代には死刑はなくなり、代わりにあたるのが「産刑」。
殺した分産め、という事で男でも人工子宮を埋め込まれ、死ぬまで出産させられるという刑。
多分死ぬより辛い(笑)
こうして殺人は合理的に合法になるわけで
、まあこのめちゃくちゃな死生観に異議を唱える人物も現れるのだけど、この時代の人間はこのシステムを受け入れて平和な世の中だとして暮らしている。
(実際事件としての殺人は減ったという)
主人公育子の姉は17歳で産み人となり、20年を費やし間も無く10人目の子供の出産を控えている。
姉は殺したい相手がいる、わけではなく、「殺したい」という自らの欲望を満たすために産み人になったという。
未来に命を繋ぐのは彼女の「殺意」。
うん。
死生観がテーマですね。
マイブームです(笑)
私の感想としてはこの話を読んで
この世界も今自分が暮らす世界もなんら変わらないんだろうなあ
と、いう感じ。
印象に残ったのは
世界はいつも残酷です
残酷さの形が変わったというだけ
私にとっては優しい世界になった
誰かにとっては残酷な世界になった
それだけ
というような産み人の姉の言葉。
物語の中で効果的に登場する「蝉スナック」というお菓子があるんだけど、有名読モが美容のために食べてるという事で大ヒットし、若い子達、OLなんかもポテチを食べるかのように蝉の丸揚げスナックを食べるシーンが出てくる。
ちょっと気味悪いんだけど、そもそも今自分達が食べてる肉とかだって見方によれば蝉スナックほどの異様さはあるかもしれないよね。
なんて思ったり。
多分どんな世界もきっと本質的なものは変わらないんだろうな。
変わったのは「常識」だけ。
正常も異常も常識次第。
そんな事を考えさせられる作品でした。
表題作を始め、4つの話の短編集であとの話はこれから読みます。
ちょっとこれから注目したい作家さんかも。
◆次回ライブ
8.24(木)川越ジャミン
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