男のジブリ飯。 -107ページ目

占い

「今日のあなたのファッションはみんなから好印象だったよ!」


いや、今日は朝寝坊したから、着ていくスーツ選びは、
昨日とほぼ同じだったんだけど。。。

唯一変えたネクタイが、ポイントアップだったのか。
それが逆にみんなからウケた、というのだろうか。

なら、普段、ちゃんと着ていくスーツ選んでたボクは、
ただの馬鹿者みたいだな。

・・・そんなことを思ったのは、毎週月曜~金曜にかけて
テレビ朝日で深夜に放送される「お願いランキング」の
最後のコーナー「答え合わせランキング」を見てからだ。


「答え合わせランキング」

その占いは、その日あった出来事はこうでした!
という、1日を振り返るという、斬新すぎる占いをいう。


ボクがたとえ、今日1日ヤなことが続いていても、
「答え合わせランキング」で1位になったのであれば、
ボクのその日は「超ラッキー」な日だったことになる。

逆に、今日念願の彼女を手に入れ、あまつさえ宝くじも1等が
あたっちゃっても、ランキングで最下位であれば、

ボクのその日は「超バッド」な日であり、急遽彼女と別れる算段を立て、
大金をドブに捨てる計画を作らなければならない。


とりあえず、ボクは今日着ていたスーツを、
洋服の青山で大量に仕入れてこようと思います。

我が社のタニモトさん

彼の名前は 谷元さん。

モトは「本」じゃなくて「元」なんです。



今年で30歳。

うちでの社歴は4年くらいの転職組。




そんな彼は、とっても天然。



「四万十川」という字を見て、

「なに? 中国の川?」って言っちゃうくらい。


いえいえ、タニモトさん、全然日本ですよ。



なんて、かわいらしいんでしょう。

そんなタニモトさんが、ボクは大好きです。




ボクは、タニモトさんの博識ぶりを確かめるために、

こんなクイズを出してみました。




「ナイル川って、どこの国の川?」



「インドじゃないの?」





ごめんなさい、タニモトさん。

ボクが出した問題が難しすぎました。




仕方ないので、もう1ランク下げたクイズにします。





「アメリカの首都は?」






「ん~・・・


 俺の中に、3つあるんだけど・・・」





あらら、タニモトさん。

すでになんかおかしいと思いませんか?

首都とか、3つもないですよ。



でも、黙って聞いてみましょう。




「1つは、、ニューヨーク」



うん、想定の範囲内です。

もはや鉄板の間違いですね。

次。



「2つめは、、、セントルシア」


これは予想外でした。

首都ですらなく、別の国の名前なんですが、

この国の名前を知っていたことに賞賛を浴びせたい。




「3つめは、、、一番自信ある」



いいから、さっさと言え。

どうせ間違うんだから。





「クリントンだろ!!!!」



あぁ、なんかもう、「おまえ、マジか?」という空気。

もはや、地名ですらありません。











愛くるしいタニモトさん。

ボクが心から敬意を表する人です。

エキストラ

平凡だったなぁ、俺の人生も。

人間、死を実感すると今までのことを振り返るというのを聞いたことはあるが、
実際にそういう立場になると、あぁなるほどと実感できるよ。

35歳で死ぬってのも、そこまで平凡ではないのかもしれないけど、
「まだこんなに若いのに」と言われるほどは若くないし、微妙な年齢だな。

ただ、ここまできて平凡なのが、死ぬ理由がトラックに轢かれて、
ってところだよな。なんか、こう、ギャングとの抗争で撃たれて、
とかだったら、もうちょっとドラマ性があったのに。

俺は今、意識不明の重態、さらに言えば危篤状態ってことになるんだけど、
なんだろう、無意識の意識というか、今の状態になって、ゆっくり考える
時間ができた気がする。

思い返してみれば、俺の人生って、生まれてから死ぬまで、
ずっと普通の生き方だったな。
漫画や小説、ドラマなんかで、普通の人がいきなり何か事件に巻き込まれて
やれ地球を救うだ、やれ悪の組織を壊滅させるだ、とかの物語が始まっていくんだけど、
俺の人生には、そんな劇的なことなど無関係だった。
演劇の役でいうところの「エキストラ」。そんな言葉が俺にはぴったりだ。

とはいっても、大方の人間は、そんなドラマみたいな人生なんて送ってもないんだろうが、
俺は自分でも思うが、特にひどく「普通」だった気がする。

中流家庭に生まれて、両親は典型的なサラリーマンの親父と、専業主婦のおふくろ。
2つ上の姉が一人、大学卒業後のOLを2~3年経て、さっさと結婚した。
離婚もなく、子供を2人、同じように上が女の子、下が男の子の4人家庭を築いてる。

ここ2~3年くらい、姪っ子、甥っ子には会ってないが、あいつら元気にしてるかなぁ。
上の姪っ子は、中学校に上がったんだったけか。お祝いしてないなぁ。

小さいころから、ほんと、平凡だった。
幼稚園は地元で、自宅から徒歩10分の場所。かけっこやお絵かきでも賞をもらったこともない。
友達は普通にいた。特に多くも少なくもない。

小・中学校も地元の公立。小学校6年間から中学校3年間まで、成績は中より少し上で、
可もなく不可もなく。小学校は「大変よくできました」と「がんばりましょう」はまったくなく、
「よくできました」と「よいでしょう」で通知簿を占めていた。言葉が思い当たらなかったか知らないけど、
「よいでしょう」って評価も不思議だな、今思うと。

初恋は、月並みに小学校の時の若い担任の先生。顔は…なんか美人系だった気がするが…
もううろ覚えだな。体育の先生とデキ婚して辞めてった記憶だけははっきりしている。
どんだけショックだったことか。
あぁ、ダメだ。あの頃の感情を思い出すと、想定より早く死んでしまう。やめやめ。

初めて女性と付き合ったのは、中2の頃だったか。名前は「ゆうこちゃん」。確か。
どういう漢字だったかも、もはや苗字がなんだったかすら忘れてしまった。後藤?武藤?
「何かしら藤」だと思う。自信はない。だいたい、付き合って3ヶ月くらいで別れちゃったし。
まぁ、中学校のときのお付き合いなんて、よくわかってなかった。

高校生活もいたって平凡。そこまで偏差値も高くない、少し勉強を頑張れば入れる程度の高校だ。
真面目すぎず、でもツッパることもなく、目立つようなこともしなかった。7:3のガリ勉メガネに
もならなかったし、タバコをすすめられて断固拒否するほど、野暮でもなかった。
1本吸ってめちゃくちゃ気分悪くなってその場で吐いてから、吸うことはなくなったけど。

目立つようなこともしなかった、とは言ったものの、あえてしなかったわけでもない。
結果として目立つことがなかったんだ。何かの教科で抜群の成績を取っていたわけでもなく、 運動も特に何かが得意だったわけでもない。
野球でヒット出せないわけでもなく、エラーを出さなかった わけでもない。
サッカーで点を取ったこともあるし、オフサイドを取られたこともある。
その代わり、特別不得手だったものもない。どれも、平凡に卒なくこなした。

だからというわけでもないが、いじめには遭わずに済んだ。いじめられてるやつも…
いじめはあったか。あったな。俺は助けもしなかったけど、いじめにも参加はしなかった。
かわいそうだなとは思ったけど、下手に助けたら、自分がいじめられちゃうかもしれないからほっとくしかなかった。

大学も浪人することなく、2流の私立大学に入学した。順当に。
大学に入って、初めて一人暮らしをし、初めてアルバイトをした。
無駄に達筆で書かれた「なんとか反対!」って書かれた看板持って学生運動
とかやっていた学生も何人かいたが、もちろん俺はやらなかった。
というより、これは極端すぎる例か。普通はやらないな。
とにもかくにも、この時期になってくると、もはや自ら目立ちたくないという意識が強くなった。

中堅のメーカー企業に入っても、俺の「普通」の生活は続いた。
メーカーの営業職で、成績が抜群でもないけど、そこそこ売上を立てて、
けれど時には目標に達せず部長にも怒られ。「デキない」レッテルを貼られなかったものの、「デキる」レッテルも特に貼られることはなかった。

今の嫁とは社内恋愛だ。俺が25歳のときに入った、短卒の新入社員だった。
何回かご飯を一緒に行き、お互い好意を寄せて、付き合った。4年付き合って結婚した。

子供はいない。これから作ろうと思ってたけど、心残りだなぁ。


そして今、俺は病院のベッドにいる。


死ぬ間際に、よく、走馬灯のように思い出がかけめぐるって言うけど、
なんか、勝手に流れる、というよりは、自分で思い出のリールを回しているような感じだ。

あらためて思い起こしても、普通の人生だった。これほどまでに何もない人生というのも、
なかなか送る人間はいないのではないだろうか。普通の人間でも、何かで
表彰されたり、何かの分野で1番を取ったり、はたまた逆にどこかで不良きどって
みたり、何か悪さをしてたりするもんだ。

俺の人生においてはそういうことは一度たりともなかった。

そういう人生に憧れがなかったわけではない。むしろ、そういう人生を送りたいな、
という人並みの夢もあった。でも、今この死を目前に迎えて考えてみれば、
平穏すぎるといえるほど平穏だったこの人生でよかったのではないかなとも思える。


「あなた…」

意識の向こうで声が聞こえた。妻の智子の声だ。
きっと泣きそうな顔でいるのだろう。声が震えていた。

妻を残して先立ってしまうのも、心苦しいものはあるけど、
夫が先立つのも「普通」だろう。苦しい言い訳だが、それで許しておくれ。

ふと、体が軽くなった。お迎えが来る時間も間近に迫ってきたんだな。

もう逝く時間か…

なんか、手にぎゅっと圧力を感じる。智子が俺の手を握ってくれてるんだな。
ありがとう。普通な俺だったけど、お前を愛する気持ちだけは、誰にも負けてなかったよ。

俺は先に逝くけど、俺が逝った後はちゃんといい人見つけるんだぞ。


「あなた… ごめんなさい。今までずっと黙っていたことがあったの。
隠してて、本当にごめんなさい。ずるいわよね、こんなときにこんなこと言うなんて。」

隠し事? この間際で言われるのも、なんか困ってしまうが、いいさ。
誰にでも言えないことのひとつやふたつ。浮気かな? いい人なら、その人と一緒になりな。

「あなたは、本当は、この地球から3万光年離れたアスペルク星からやってきたの。」

…は? なんだ、急に。 なんだよ、3万光年て。 なんだよ、アスペルク星って!

「敵対星のガスマルク星から襲撃を受けて、アスペルク星は滅亡の危機に瀕したわ。
 あなたの親はどうにかあなただけでも助けようと、この地球に、生まれたばかりのあなたの送ったのよ。]

今度はなんだ、ガスマルク星って。おいおい、説明受けている時間もないんだけど、俺…。
俺の親は、龍彦と千代子で、れっきとした日本人だぞ。

「残念だけど、アスペルク星は滅んだわ…。」

残念て言われても… そんなわけのわからない故郷に残念と思うほどの愛着もないんだが。

「わたしは、あなたの家系を代々支え続けてきた執事の一族だったわ。
 あなたは、「普通」の人生を送ってきたんではなく、「送らされて」きたのよ。」

あぁ、睨みたい。睨みたいよ、お前を。
今どんな面してそんな戯言を吐いているのか拝みたいよ。

お願いだから、目を開けたときには、「どっきり」って書いた看板持っててくれよ。
もし俺が目を開けたら「うわ~!騙されたよ~~!」て言ってやるから。

「ガスマルク星からの追っ手から逃げおおせるためにね。
 なんでそんなことしたか、わかる?」

わかるわけ… ねぇだろ…

あぁ… でもやばい… もう意識がなくなり…始め…

「本当はあなたは、アスペルク星の王家の王子様だったのよ!」

だいたい最後になって…  そんなこと…   言…



                                      (完)