※この物語は、生まれながらに不安障害を持った男が、2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。
なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。
〈前回のお話〉
《第74話 早く彼らと並びたい》
「明日も昼から、と」
夜。俺は自宅マンションでモンストをしながら明日のことを考えていた。
明日のバイトは昼から3時半まで。
リネンカウントの後、アメニティーの補充作業もすることになっている。
まだ週2日で、短い時間だけど、少しずつ体を慣らしていって、いつかは週5日、フルタイムでバイトを入れられるようになりたい。
現状ではまだ、俺がいつも見かける『働いている人』には全然及んでいない。
工事現場で働く人。
カフェで働く人。
パチンコ屋で働く人。
本屋で働く人。
牛丼屋で働く人。
ドラッグストアで働く人。
すれ違うスーツ姿のサラリーマン。
etc。
まだまだ彼らが輝いて見える。
普通に働けている人たちが眩しい状態だ。
でもちょっとずつ、近づいているという手ごたえはある。
「よし、終わり」
モンストのイベントクエスト周回をキリのいいところで終えて、テレビを点けた。
そしてイヤホンジャックでテレビを聞きながらモバをプレイ。
(んーと……)
モバの試合は終盤。
残り2分となった。
(こういう時、敵はあそこに隠れてるから……)
味方のアタッカーに敵の位置を知らせて、俺が前を張って相手の攻撃を受けた。
その隙に、味方のアタッカーたちは相手を次々と倒していき、
「よし、勝ち」
俺たちの勝利となった。
(って待てよ……)
これ、もしかしてリネンカウントに使える?
俺は閃いた。
(そういえば、時間帯によって清掃が早く終わる階層とかあったよな。それを利用すれば、かなり効率的にカウント出来るんじゃないか?)
バカ正直に上から順にやらなければならないというルールは無いし。
清掃が終わっている部屋が多い階層を先にカウントをやれば、正確さが増す。
明日、試してみよう。
あ、その前に鞘師さんにも聞いてみるか。
時間帯によって終わるのが早い階層があるかどうか。
そうこう考えていると、不意にライン通話が入った。
【第75話に続く】