前の記事に引き続き、7月4日~6日の総務環境常任委員会の行政視察のご報告をいたします。

 

<視察項目>

4日 福岡県宗像市(小中一貫教育、危険空き家対策)

5日 佐賀県佐賀市(小中一貫教育、ICT利活用教育)

    福岡県久留米市(公共施設等総合管理計画)

6日 福岡県春日市(コミュニティースクール)

 

福岡県宗像市(小中一貫教育、危険空き家対策)

宗像市では、市内全小中学校で小中一貫教育を実施されています。小中一貫教育というと、私立学校のようにエスカレーターで進学し、施設も一体となっている姿を想像していましたが、それだけではありませんでした

1つの中学校に対して、複数の小学校と一貫教育がされている例もあり、小学校と中学校の教員がお互い学校を行き来して授業をしたり、小中9年間の統一的なカリキュラムを作成してこられました。

 

三木市では(新市政になって今後どうなるかわかりませんが)、小規模校対策の一手段として小中一貫校が検討されてきましたが、宗像市の場合は、中学1年生の学習意欲の低下等、いわゆる「中1ギャップ」や不登校への対策として学校の統廃合の問題等とは無関係に行われてきたという背景があります。その為、現在でも統廃合の議論は無いとの事でした。

 

教委に出向している教員の方からは小学校と中学校の教員では農家と漁師ほど違い、導入当初は教員の負担も大きかったという事ですが、慣れてきた結果、教員のアンケートでも9割が小中一貫教育を評価しているようです。

 小中一貫教育でのメリットとしては、まずは小中の先生が共同で作った統一カリキュラムによる効果的な指導があります。

非常にタイムリーな話でびっくりしましたが、昨日、「宗像沖ノ島と関連遺産群」が世界遺産に登録されましたが、郷土の歴史教育として、9年間の統一カリキュラムでも重視されているとのお話がありました。

また、当初小学生がいじめられるのではというような心配もあったそうですが、結果は真逆で、中学生がめちゃくちゃ優しくなるという事もあるようです。

 

次に、宗像市の危険空き家対策についての説明を聞きました。私が視察先に提案した内容でしたが、今回の視察で最も収穫があったものとなりました。

 

宗像市では三木市ではまだ実施されていない略式代執行による危険空き家の解体が2例実施されています

 

略式代執行とは、相手方やその所在が不明(全員が相続放棄した場合を含む)である場合であって、一定の要件を満たす場合に、行政代執行法で定められた文書戒告などの手続を省いて代執行してしまおうというものです。

地震等で簡単に崩れ去り、隣家に危害を加える恐れが高い危険空き家は代執行で税金を使ってでも除却すべきだと私は考えます。

実際の建物の写真を見ると既に一部大きく崩れているような建物で、実は三木にも同じような建物もあります。

 

しかし、相続人がいない場合、全員に相続放棄されていた場合は、撤去に係った費用の請求先がありません

 

その対策として宗像市さんが実施している、更に進んだ取組として、相続財産管理人制度の活用をされていました。これが今回の視察における最大の収穫でありました。

 

市は所有者不明の空き家に対して、家庭裁判所に相続財産管理人の申し立てを行います。(申し立て費用は収入印紙800円、連絡用の郵便切手代、官報広告料3775円と低額)

相続財産管理人は弁護士等の専門職が行うと思いますが、財産を売却できた場合、売却金額から管理人に数十万~100万円程度の予納金(管理人の報酬)を支払い、残りは債権者(市)に分配され、最終的には国庫に帰属する事になります。

 

簡単に言えば、今までは代執行で危険空き家を撤去しても費用回収は困難と諦めていたものが、費用の一部とはいえ戻って来る仕組みとなっています。

 

宗像市では、相続財産管理人制度をまだ危険空き家とは言えない、代執行の対象外の物件にも適用しています。

これは次の所有者に解体を促すためのものです。

市は財産管理人に予納金45万円を定めていますが、これによって、相続財産管理人に固定資産税を新規課税できるようになります。

 

危険空き家による近隣住民の生命と財産を守る略式代執行については、現在、三木市もようやくその体制が整いつつある状況です。

そして、それを更に前に進めて、これまで費用回収をあきらめていた代執行の費用を回収し、所有者がいないため、課税できなかった物件に課税ができるようになる、相続財産管理人制度をいち早く三木市でも導入すべきと感じました。