祇園の教訓―昇る人、昇りきらずに終わる人(岩崎峰子著 / 幻冬舎) | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

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2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

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祇園の教訓―昇る人、昇りきらずに終わる人(岩崎峰子著 / 幻冬舎)

京祇園の特殊な世界を覗き見ることが可能な一般書

Amazon カスタマーレビューでの評価が極めて低く,
ちょっと先入観を持って読み始めたものの,
☆5つとは言えないまでも,思ったより斬新な内容もありました.
 (勿論,個人差はあると思いますが...)
特に京都祇園,花街と云った普通の人間では知るすべのない世界を
知りたいと思う人は少なくないはずで,その世界で生き抜いた筆者の話は
それなりに注目に値するところはあると思います.
ただ,レビューしている方の意見に多いように,ちょっと鼻にかけた
記述になっていることも否めませんが....
ただ,考え方によっては,京花街ではこれが普通なのかもしれません?
要は,祇園の花街はそれほど特殊な世界だと考えるべきではないかと思うわけです.
 (これは悪い意味で言っているのではなく,常識が違うのだと言うこと!)

祇園甲部(京花街)という特殊な世界で4歳から育った筆者の体験談は
これを全く知らないものにとっては実に貴重な記述だと感じます.
ただ,間違ってはいけないこととして,本書はビジネス書ではないということ.
祇園を研究材料にした 『京都花街の経営学(西尾久美子著)』があり,
 → 神戸大学経営学部の学位論文でもある
本書もビジネス書のような扱いを受けるようなところはありますが,
それは違うようで,この点が批判を受けている一面かもしれません.
 (そもそも,ビジネス書の定義自体があいまい?)

内容に関して,花街のルールみたいなものいくつか挙げられていますが,
特に印象深いこととして,顧客満足度を如何に上げるか,
顧客を満足させるべきポイントとしては徹底した聞き手に回る,
それによってストレスを発散させてあげる(癒しの要素),
この 『傾聴』 の姿勢こそがカウンセリングの基本であり
ロジャーズの来談者中心療法そのものだと思います.
これを学習することなく実践しているあたりはちょっと驚きました.

また,話を盛り上げる,三枚目になりきる,
この顧客主体の対応はプロのなせる業だと思います.
従って,本書を読むと対話術やカウンセリングの視点を学ぶことができ,
それなりに得るところがあるように感じます.

最後に,花街での料金が本書には記されていますが
思ったほど高額ではなく2時間コースで4万円程度とのこと.
銀座の高級店で飲むのとさほど変わらないので,一度は行ってみたいと思いますが
残念ながら一元さんはお断り,最も越えにくいハードルはここかもしれない?
そんなことも教えてくれる一冊でした.