会社の文化は歴史に育まれ,事業の存続はトップ次第 | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

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2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

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会社の文化は歴史に育まれ,事業の存続はトップ次第

 今日(1/5)の日経新聞,日曜に考える からです.

<日経新聞電子版広告から>*********************************
◆ニッポン半導体、なぜつまずいた 巨艦日立の教訓

かつて「電子立国」を目指した日本だが,昔日の輝きを失って久しい.
10年前には5兆円あった電子産業の貿易黒字が昨年1~9月はついに赤字に転落し,
国内唯一のDRAMメーカーだったエルピーダメモリは米国資本の傘下に入った.
どこで道を間違い,何につまずいたのか.
「産業のコメ」と呼ばれ,四半世紀前には日本勢が世界を席巻した
半導体産業の歩みを検証しつつ,事態打開のための方向性も探る.
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本文は日経新聞紙面上からしか読めませんが
 (電子版は有料読者のみに限定,せこい!)
ここでは日立製作所を例に取り,東芝との対比もからめ,
半導体における巨漢日立が半導体事業で沈んだ背景を考察しています.

 巨漢日立 激流に沈む
  変化に動けず,逆風の四半世紀

日立では半導体事業の本質を理解できない,
これは重電出身の会社が故の日本的な考え方があると言います.
重電事業(電力やインフラ関連の産業機器)は
古き日本の基幹産業,事業計画が明確に立てられ,計画通りに進捗,
売り上げも損益も計画に近い形で現実のものとなり
先の見通しも立てやすいので投資もしやすく,それが故に投資回収も進むので
儲かるビジネスとしては確たるモノが作れるというわけです.

 投資は回収出来るか否かが重要で,
  その事業計画が確実に実現するかが会社の損益に直結します.
 最近左前の会社に共通して言えることは,夢のような売り上げ計画を
 さも実現できるかのように考える技術者の意見で動かしてしまい,
 とんでもない赤字を計上してしまうこと.
 会社経営はもはや技術進歩との対比が取れなくなりつつあると言えるでしょう!

対して半導体や家電事業は想定通りに進むことの方が稀,
受注の取り消しやライバルとの安値攻勢に依る消耗戦に
そのビジネス形態がぐちゃぐちゃになることは常と言えるでしょう.
お客だって資本関係がない場合,約束を反故にすることも常と言えます.
その結果,安定した収益が上げにくい,と言う事で
巨額な投資はかなりの決断が必要になります.
 → 無難に済ませたいサラリーマン社長ではその判断が出来ない場合が多い
   それが故に大手電機の半導体ビジネスは沈んだと言われています.

この決断を,重電事業が常識である経営トップには出来ない!
これが個々の会社の歴史に縛られた呪縛だとすると,
日立はこの呪縛から抜けられなかったが故の半導体事業での失敗に繋がるとのこと.
これは半導体だけではなく,ハードディスク,プラズマパネルでの
失敗も同じ轍を踏んだと言えるでしょう.

また,日立では半導体事業出身者は出世できない負のループに陥り,
半導体プロパーでは副社長さえ出なかったと,専務も唯一ひとりだけ,
要は儲からない事業部から会社幹部にはあがれないと言うことです.
これは単に出世だけの話に留まらず,予算主義の会社での事業のステップアップが
ままならないことを示します.つまり,半導体の管轄取締役に
投資の最終判断が出来る重役がいないと言うことは
投資に際して支援してくれる人がいないと言うことで,
『赤字の事業部は黙っておけ,投資なんか認められるか!』
と言ったループにはまってしまい,じり貧に陥ると言うことです.

加えて,半導体や家電と言った事業はダイナミズムを伴い,投資の額も大きく
それを即決しなければなりません.これを経営陣がどこまで認めて
英断を下すかですが,重電基調の会社にはこれができないと言う事,
つまり重電重視の日立では半導体事業がどこかで行き詰まることは
避けられなかったと言うことでしょう.

対して東芝は,基幹事業の社会インフラ系ビジネスの依存度が
日立に比べて小さかったが故に半導体事業を会社のコアビジネスにしたい,
半導体事業出身の重役も多く,半導体事業への理解もあったと思われ,
トップの意向が事業拡張のフェーズにマッチングしたために
今の東芝半導体事業が繋がったとも言えます.

確かに,東芝にはフラッシュメモリーという独自に開発した
デバイスがあったわけですが,それは東芝に限った話では無く
日立だって,NECだって世界トップレベルの独自技術は持っていたことを考えると
事業の存続はトップ判断に依存すると言っていいように思いますね!
 → 東芝の過去10年の投資額は2兆1,590 億円だそうです!
   年平均 2,000億円以上という数字は,並の経営者では英断出来ないレベル?

日立に代表されますが,即決即断を必要とする,
製品サイクルの短いビジネスにおける日本企業の劣勢は
IT分野やデジタル家電では特に顕著ですしね!

唯一の例外がソフトバンク,孫社長の英断があっての今のソフトバンクがあるわけで
会社というのはトップで決まると言い切れるのではないでしょうか.

<1990年の半導体世界トップ10の現状>

1.NEC → 完全撤退,最後はルネサスに切り離して関わりを拒絶
2.東芝 → 現在唯一の半導体生き残り,収益も上がっている
3.モトローラ → フリースケールに鞍替え
4.日立製作所 → NECに同じ
5.インテル → MPUに特化,半導体事業の成功事例となる
6.富士通 → 完全撤退したいが中途半端な状況,ハード系ビジネスは全敗
7.TI → 現状も善戦
8.三菱電機 → ルネサス,エルピーダに事業継承,特殊半導体は社内に温存
9.フィリップス → 完全撤退
10.パナソニック → 家電含め今やぼろぼろ,垂直統合モデルの失敗の典型

こうやってみてみると,
日本には即決即断の事業は厳しいことを再認識した次第です.