ハイテク分野は摸倣戦略が最も有効  | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

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2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

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ハイテク分野は摸倣戦略が最も有効 

『ハイテク分野は摸倣戦略が最も有効に働く』
  ピータードラッカーが述べた言葉だそうです.

何故かと言うと,ハイテク分野は技術志向であり,
市場志向ではほとんどの場合にそうでは無いからだそうです(この指摘は正しい!).
敏感な摸倣者はビジネスの弱点を突き,市場の要求に応じて割安なクローン機や
差別化された商品を作り上げるので,市場志向のない技術に偏ったビジネスは
商売では結局のところ勝てないと言うことです.

ここで注目すべきは,技術志向のイノベーターは
ビジネスの視点では摸倣者に淘汰される場合が多いと言うことで,
この摸倣に関わる戦略が注目するに値すると言うことです.

今回は この 『摸倣戦略』 について考えてみたいと思います.
実はこのテーマ,早稲田の大学院で学んでいたときの恩師が
新刊を発刊する都度その書籍を送ってくださり,
そこで取り上げられている視点が『摸倣』であることから
小生も注目するに至った訳です.大学の恩師はいつまでも師であり
大変ありがたいと感謝する次第です.
特に最近の不勉強をそこれら書籍を読むことで補っています.

 さて,ここで2冊の書籍を紹介したいと思います.

  『模倣の経営学』(井上達彦著 / 日経BP )

まずは恩師の書籍,この書籍を読んだとき,『へぇ~』と
正直思いましたね! 摸倣とはイノベーションの対局と考えていたわけですから
この書籍で摸倣を肯定して,更に戦略化するという指摘には
凡人には考えが及ばないというか,並外れた発想があるように感じました.

そもそもイノベーションは独創的であって,
且つ誰もが考えの及ばないことを実現した場合に与えられる称号のようなモノであり,
誰しも思い浮かぶのが『スティーブ・ジョブス』のような
仕事と考えるのではないでしょうか? 
 (ただ,本書ではアップルは意図的に取り上げなかったそうです)

ジョブスの作ったアップルはこれまでにない発想の
コンピュータMacintoshであったり,
 (Windows は Mac OS の摸倣であることも周知の事実です)
夢に描いた携帯端末のi-Pod や i-Pad, i-Phone を生み出しました.

このような創造性を人はイノベーションと呼ぶ事がありますが,
これもよく考えると模倣から始まっていると言えます.
Macintosh はこれまでにないコンピュータであったことは間違いありませんが,
コンピュータ自体はその当時にも存在していました.
 (初期マッキントッシュのそもそもの原点はパロアルト研究所からの摸倣)
i-Pod や i-Pad も発売当時には似たような携帯端末が存在していたわけで,
アップルのイノベーションも0から1の発明ではなかったわけです.
このような発想から生まれたイノベーション経営を筆者は
模倣をベースにした経営手法と言っているように思います.

『模倣』と言う言葉は,ある面軽蔑的な意味合いもあり,
物まねは独創性の両極にあるように思いがちです.
そもそもイノベーションとは何なのか,ますます分からなくなりますが,
本書に書かれているイノベーションは我々一般人が持っていたイメージとは
異なるようです.

『模倣』と書いて『見倣う(みならう)』と理解すべし!

イノベーションに繋がる模倣とは自分なりに何かを加えた見本の再編であり,
これを成功に導くことが出来ればイノベーションに繋がるというわけです.
成功とは経営学の視点で言えば収益を上げることだろうし,
本書は経営学書なので,成功は収益に繋がるものとして考えています.

次に,時を同じくして書かれていたもう一冊の書籍

 『コピーキャット/模倣者こそがイノベーションを起こす』
    (Oded Shenkar 著, 井上達彦監修/ 東洋経済新報社)

イノベーションの先端を切って走っている企業の儲けは,
模倣企業に比較して小さいとのことです.
(本書では日米対比で,模倣と言われる日本企業の利益率が高いと主張しています)
イノベーションがビジネスを成功に導く唯一の要因ではないと言うことです.
これはイノベーションにも大きなリスクが存在するからで,
2番手の方が有利な場合が存在しても良いと言うことです.
これが模倣ビジネスの優位性であり,
模倣をイノベーションに関連づけることでもあります.

本書ではこれを『イモベーション』と提唱しています.
ただ,模倣にも単純な模倣とは異なる,成功するであろうやり方があり,
摸倣のタイミングでは,以下の3パターンを紹介しています.

 1.Fast Second(迅速な2番手):イニシャルコストの低さ,成功確率の高さ
    → 新しさの不利益克服,パイオニアのシェアを75%奪える!

 2.Come from behind(後発追撃者):品質,価格,外見などの差別化を確立後に参入

 3.Pioneer importer(先駆的移植者):オリジナルと異なる分野で自らの地位を確立

  また,摸倣に対するマイナスイメージの払拭も重要とあります.

さて,日本は活性化されるのか,
勢いを失った日本のハイテク企業は復活できるのか,
どうしたら仕事にやる気を持てるのか,
そして,どうすれば日本に起業家が増えるのか?
このトリガと言えるモノが種々の試行錯誤から『模倣ではないか?』と?

 日本人は謙虚に他者に習う(倣う)学習スタイルがあり,
  ものづくりに改善を加えて付加価値を上げる,品質を上げる
   生産規模を拡張させる,そして顧客ニーズを吸い上げることができたわけです.

  これは過去の事実として,日本におけるビジネスの成功を導き
   戦後のどん底から世界第2位の経済大国にのし上がりました.

  単純なる過去の繰り返しは通用しないとしても
   現状を見据えた模倣戦略の再構築が,衰退した日本産業
    特に半導体や電子機器産業に復活のきっかけを与えてくれるかもしれません.

 復活への摸倣戦略立案が望まれます!