コピーキャット/模倣者こそがイノベーションを起こす | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

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2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

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コピーキャット/模倣者こそがイノベーションを起こす
(Oded Shenkar 著, 井上達彦監修/ 東洋経済新報社)

 模倣研究の日米第一人者による合作,模倣ビジネスの偏見見直しを説く

そもそも模倣とはイノベーションの対極にあると思いがちですが,
実はそうではないことを本書は分かり易く,実例を使って説明してくれています.

そもそも,イノベーションの先端を切って走っている企業の儲けは,
模倣企業に比較して小さいとのことです.
(本書では日米対比で,模倣と言われる日本企業の利益率が高いと主張しています)

イノベーションがビジネスを成功に導く唯一の要因ではないと言うことです.
これはイノベーションにも大きなリスクが存在するからで,
オーバーヘッド(投資コスト)の大きさ,
最初の製品化故の市場の受け入れ難,パイオニアが故のプライド,
こう考えると2番手の方が有利な場合が存在しても良いと言うことです.

これが模倣ビジネスの優位性であり,
模倣をイノベーションに関連づけることでもあります.
本書ではこれを 『イモベーション』 と提唱しています.
ただ,模倣にも単純な模倣とは異なる,
成功するであろうやり方があり,本書では成功の10箇条としても紹介しています.

 また,摸倣に対するマイナスイメージの払拭も重要とあります.

摸倣が何故これまでに重要視されつつあるか,
その要因として時代の変化も大きく寄与しているように思います.
事業のグローバル化とアウトソーシングの台頭,
ビジネスセグメントのモジュール化がより鮮明になることから参入障壁の低下,
暗黙知の形式知への展開が容易になったことによる知識移転の容易さ向上,
ブランド力の低下(これは低コストPBの台頭の裏返し)に示される顧客意識の変化,
数え上げるときりがないかもしれません.

 時代は確実に動いていると言うことでもあると思います.

また,摸倣と言っても,単純には捉えられないと言う指摘は更に興味深いところです.
摸倣されている事例として紹介されているサウスウエスト航空のビジネスモデル,
これを摸倣して成功したジェットブルー航空,
対して摸倣に失敗したコンチネンタル航空(キャリア内キャリアでコストの共食い,
結果として2度の破綻),低コスト構造を築けなかったユナイティッド航空の
失敗事例等がうまくまとめられています.

摸倣を成功に繋げるには,既存ビジネス(レガシービジネス)との融合が
機能しなければならないとあります.
つまり,単なる『ものまね』と摸倣を個別組織向けに最適化できることは
違うと言うことでしょうか?

更に興味深い記述として,『特別寄稿』(訳者寄稿)に述べられている
日本企業のイモベーションがあり,
その事例として『NPS(The New Production System)研究会』が紹介されています.
トヨタ生産システムの異業種への模倣が組織的に奨励されていた事実,
そしてこの研究会における会員企業はその活動によって企ビジネスを成功に繋げています.
日本人は謙虚であり,他に倣う学習スタイルをもつが故に,
欧米企業とは異なる自分たちの強みを引き立たせるビジネスを摸倣から展開できるという.

 『なるほど』,そううなりたくなる説明ですね.

と言う事で,最後に,本書に併せて監修者の下記書籍を読まれることをお勧めします.
少し専門書的な本書に比較して下記書籍は一般向けに平易に書かれているので,
『模倣』に関する理解が更に進みます.

  模倣の経営学(井上達彦著 / 日経BP )

 いずれにせよ,本書はなかなか内容の濃い,読む価値のある書籍です!