六部親子と墓 | 伊豆高原 遊リゾートのちーさん

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伊豆高原 遊リゾートの貸別荘(アートロード・ロイヤルハイランド・レイクタウン)です!

伊豆のあなたのお部屋としてのご利用をお待ちしております!

今は暑くて歩くのが大変ですが、

涼しくなったら、民話・伝説を辿って行きたいです。


   

       六部親子と墓

                「宇佐美の年輪」より

                 著・山本 悟


おそろいのねずみ木綿の着物を着た、六部親子連れ

が、網代峠を越え宇佐美村に向かっていました。



六部・・脚絆姿で巡礼した僧(ウィキより)

画・ウィキより   六部殺し(怪談・この民話・伝説とは関係ありません)
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前を行く父親の背負った逗子が、時折大きく傾きます。


「大丈夫か、父ちゃん。」


後ろから息子が心配そうに声をかけます。

父親は一瞬背筋をぴんと伸ばします。


ところが、宇佐美村はもう少しという、洞の入にさしかかった

時でした。

父親は力がつき果てたのか、よろよろと前に倒れ込んでしまい

ました。


「父ちゃん、父ちゃん」


息子は父親の横に座しゃがみ、力いっぱい揺さぶりました。

父親は息子にだけはひもじい思いをさせまいと、水をすすり

空腹を抱え、やっとここまでたどり着いたのです。


息子は冷たくなって行く父親にすがり着き、泣いて、泣いて、

泣き続けました。


ようやく涙が枯れたころ、宇佐美の方から坂道を上がって

来る足音が聞えました。


親子に気付いた村人は、はっとして立ち止まりました。


「・・・相模国のお寺のお参りがすんで・・・これから伊豆の

三島のお寺参りに向かうんだと聞かされていました」


問われるまま、息子は途切れ途切れに答えました。


村人は息子の肩にそっと手を置いてから、大急ぎで坂道

を駆け下りて行きました。


親子をとり囲む雑木林は、小枝一つ揺らさず、静かな時

が流れて行きました。


山道に再びあわただしい足音が聞こえて来ました。

村役人を先頭に、五・六人の村人達が後に続いていました。


父親は、村人達の手によって、倒れていた近くの山中に、

ねんごろに葬られました。


息子は村人達と一緒に山を下り、初津の遠州屋に預けられ

ました。

そして程なく湯川村の米惣(こめそう)木下杢太郎生家の小僧

になりました。



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息子は回りの人達にもよく気を配り、陰日向なく働いたので、

数年後には番頭になりました。

その働きぶりに感心した米惣の主人は、松原村に店を

持たせてやりました。


息子には、米惣で修行したことが力となり、そのうえ持って

生まれた頭の良さで、店はとても繁盛しました。


また父親の葬られた場所には、心ある村人達の手に

よって墓が建てられました。


峠を越える人達は、子を思いながら行き倒れになった六部

のために、墓の前で立ち止まり、手を合わせました。


時は移り、昭和三十三年伊豆地方を襲った狩野川台風で、

洞の入一帯は大きく地形が変わってしまいました。

六部の墓もいつか草に埋もれたままになってしまいました。


見かねた村人達は、墓を山田の浄信寺に預け、改めて

供養するようになりました。



宇佐美 浄信寺
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