伊東市にある東林寺、河津掛けの河津三郎祐泰の
お墓がある参道入り口です。
またここを上る理由が急に発生してしまいました。
廃寺になった東光寺にあったという「せきの地蔵さん」 を
探しに来ました!( ゚ ▽ ゚ ;) は~~?
ワイワイさん には笑われてしまうと思いますが、ここを
上って行くのだけでも結構大変!
探せないまま河津三郎祐泰のお墓まで来てしまい
ました。お参りして下ります。
伊東の街中(ノ´▽`)ノ
せきの地蔵さん
著・山本 悟
「うっ寒い」
さぶは、昨日と違った寒さで目を覚ましました。
ふとんを蹴飛ばし、縁側まで走って行くと、ガラッガラッと
音をたてて雨戸を開けました。
「うわあ、銀色に光ってる!」
叫ぶなり、さぶははだしで庭に飛び降りました。
ぎっしりと降りた庭先の霜。
屋敷続きのねぎ畑には、黒い土を持ち上げて霜柱が立って
います。
さぶはギシギシと音をたてながら、霜柱を踏み倒しました。
押しつぶされた霜柱は黒い跳ねを飛ばし、着物のすそを
ぬらしました。
さぶは汚れた足を井戸水で洗い、いろり端に戻ると、
「ゴホン」とせきをしました。
「あれあれ、こんなに泥を跳ねあげて。
着物は汗ぐっしょり。風邪引いたらどうする」
ばあちゃんはさぶの着物を脱がせると、鳥肌のたった体を、
ゴシゴシと手ぬぐいでこすりました。
さぶはそれから、赤くはれあがった足の霜焼けと、休みなく
とび出すせきに、苦しめられるようになりました。
「霜焼けが治れば、せきの地蔵さんまで歩いて行ける
ようになるからな」
ばあちゃんは、乾かしたなすのへたを土鍋に入れながら、
さぶに言いました。
水をたっぷり入れて煮だし、その汁を小さな桶に移すと、
さぶはその中に足を入れました。
五日もすると、足の赤いはれは、すっかり消えました。
「さぶ、行くぞ」
さぶはコンコンせきをしながら、ばあちゃんの後について、
東光寺へ続く坂道を上って行きました。
せきの地蔵さんは、東光寺の境内のかたすみに、
ひっそりと立っていました。
「さぶもここにしゃがめ」
さぶがしゃがむと、お地蔵さんの目と、まっすぐ向き
合いました。
その目はさぶに笑いかけているようでした。
赤いよだれかけで見えませんが、「セキ・・ 」 と書かれて
「セキ一切ヲナオス」
さぶは、横に刻まれた文字を声を出して読みました。
「この赤いよだれかけはな。せきが止まったお礼に、だれか
が贈ったもんだ。さぶのせきもきっと治るぞ。
そしたらばあちゃんが、赤いよだれかけを縫ってやるからな」
さぶはこっくりうなずくと、ばあちゃんといっしょに手を
合わせました。
東光寺は、伊東祐親(いとうすけちか)の墓があった場所に
建っていましたが、明治の頃姿を消してしまいました。
せきの地蔵さんは、その近くに移され、里の人達のおまいり
が続いていましたが、その後、東林寺に引き取られました。
山門を入った左側の山すその細い道ぞいにたどって行くと、
今でも赤いよだれかけをかけて立っています。