ずっと昔から何も変わっていないだろうと思われる
池の里の景色。
天の恵みに育まれた景色は時間を忘れてしまうほど
美しいものです。
おたまばあさんの石
著・山本悟 (池の歴史より)
前に書いた 「イボをとってくれる神様」→ こちら
著・小林一之
♪子供と子供がけんかして薬屋さんが止めたけど
なかなかなかなか止められない
人達ゃ笑い親達ゃ怒る♪
池の鳴川の土手から子供達の手遊び歌が聞こえて来ます。
「うええっ、ひでえ いぼ」
歌がとぎれた時、突然すっとんきょうんの叫び声。
声の主は一番年かさの さぶ でした。
さぶと向かい合っていた 徳(とく)は、慌てて手を引っ込め
ました。
「隠さんでもええ、徳。イシバシのおばあさんに祈って
もらおう。おばあさんはな、村一番のいぼとり名人だ」
さぶは返事も聞かないうちにもう歩き出していました。
徳は言われるままに、さぶの後を追いかけました。
子供達もその後に続きました。
田んぼを横切ると、イシバシの家はすぐそこでした。
おばあさんは日当たりのいい庭先で、炭俵を編んでいました。
さぶが要件を告げると、手も休めずに語りだしました。
「昔な、トンネルの入り口近くで、おたまばあさんという人が
小屋を作ってな。
炭俵を編んでいたんさ。そしたら突然山の上から大きな石が
落ちて来てな。
おたまばあさんはその石につぶされて死んでしまった。
村の衆はな、そこにおたまばあさんを手厚く葬ってやった。
その時からその石はおたまばあさんの石と呼ばれる
ようになったんさ・・・・。」
そこまで話した時、一枚の炭俵が編み上がりました。
イシバシのおばあさんは、よっこらしょと立ち上がると、先に
立って歩き出しました。
その大石はトンネルの近くにありました。
イシバシのおばあさんは石に向かって、長いことお祈りを
していました。
子供達もその後ろに一列に並んで手を合わせました。
「徳、この小さな浜の丸石で、いぼこすれ。おはたし(お礼)
にあげた石だ。どんな性悪のいぼでもきっと治るぞ」
イシバシのおばあさんは小さな丸石を拾って、徳の手に
握らせました。
徳はだまったままこっくりしました。
「徳は、おめえいくつになる」
「六つだ」
「そうか、六つか。いぼが治ったらな。八幡野の浜まで行って、
歳の数だけ丸い小石を拾って来い。
おめえがここにあげた石が、また誰かのいぼを取ってくれるぞ」
イシバシのおばあさんは、子供達のお礼の言葉を背中で
聞きながら戻って行きました。
おたま石で夢中でこすっているうちに、徳のいぼはきれいに消えて
しまいました。
今日はお礼の石拾いに八幡野の浜まで出かける日です。
「大石落ちれば、いぼだって落ちる。わぁいわい」
子供達は徳を取り囲むようにして、八幡野に向かって
坂道を駆け下りて行きました。
こちらは伊東市 おくの公園 ソメイヨシノが満開で綺麗