いつも長々となってしまうので、今日は短くしようと思いました
が!
超、長文に。。。
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黄金千杯、朱千杯(こがねせんぱい、しゅせんぱい)
著・山本 悟
その年は、春から全くおかしな天候続きでした。
四月に入ってのおそ霜。昨夜まで鮮やかな黄緑だった桑の葉
が、一夜明けると全滅。
「これじゃあ、お蚕さまも掃きたてられ(飼え)ねえ」
その嘆きに追い打ちをかけるように、麦の実り時の長雨。
村人達は、腐った麦がらを田んぼの肥やしに踏み込んで代かき。
ようやく田植えがすむと、洗い清めたくわを縁側に並べ、お供え物を
あげ、稲の豊作をお祈りしました。
お祈りが通じたのか、その後、上々の日和が続き、稲はすくすくと
育ちました。
しかし、七月に入ると連日の日照り。田んぼはひび割れ、あっち
こっちで、少ない水の奪い合いが始まりました。
村人達が奇妙な歌声を耳にしたのは、そんな時でした。
「なんだ、ありゃ」
ひとときの争いを止め、歌声に引き寄せられる村人達。
「朝日さす、夕日かがやくその山に・・・・」
歌声がはっきり聞き取れるようになると、村人達は、わらわらと
駆け出しました。
「黄金千杯、朱千杯」
東林寺の山門前で、ささ竹を大きく振りながら、声をはりあげて
いる老人。
「じいさま、じいさま。その歌は、いったい何だ」
「千杯もの黄金、どこかに隠してあると言うのか」
老人は、石段に腰を下ろすとゆっくり口を開きました。
「わしゃあな。小せいころ、東林寺の古い紙に書いてあった歌を、
見せてもらったことがある。
この不思議な歌は、村が困った時、<朝日さす、夕日かがやく山>
を掘ってみよとの言い伝えじゃ」
「朝日さすと言えば、おてんとさんは東の海から昇るから、海から
少し離れた所だな」
「夕日かがやくは、夕日が沈む時、光り輝いて見える山」
「瓶山(かめやま)のことじゃないか」
今までののしり合っていたことも忘れ、村人達は、早速仕事に
取り掛かりました。
「瓶(かめ)だ、瓶(かめ)が出たぞ!」
みんなが見守る中、瓶に乗せられた美しい平石が取り除かれ
ました。でも、黄金千杯どころか、朱(小さいお金)一枚入っていません
でした。
口をあんぐりあけて、空を仰いでいる村人達の上に、突然大粒の
雨が落ちて来ました。
掘り出された瓶は高さ一尺五寸(約四十五センチ)もあり、東林寺に
納められました。
歌われた場所は瓶山だ。もっと別の所を掘れば、きっと黄金が出て
来るだろう。
あきらめきれない村人達は、いつかこんな歌を口ずさむようになり
ました。
「伊東よいとこ 瓶山見れば、
朝日てるてる夕日はなびく、
誰が置いたか若葉の下に、
黄金千杯、朱千杯」
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