空をとんだ坊さん(おっさん) 小林一之
むかし なーさ。
ある寺の坊さんが、八幡野に行って、知り合いの家で酒よー、
ごちそうになったって、なー。
その晩も酒よー、たーんとのんだ。
坊主のくせに、どどいつを歌いながら歩りいて行ったってさ。
たーんとよっぱらった坊さんは、
「ユウマー とおるは さみしいなー」
といいながら夜道をすたこら、歩りいてったってさ。
赤沢に近くなったときのこと。
とつぜん体がふわーっと、うきあがったと思ったら、なんとびっくり
天神ヶ峯のてっぺんから、まっくらな空にむかって鳥のようにバタバタ
やりながら、大島のほうへとんでいったあってさ。
「うっへえー、おれは空を飛んでいる」
どんどん夜空をとんでいく。目の前は真っ暗だ。何も見えない。
そのうちドッスンと音がした。 「なんだ?」 なんとまあ、坊さんが、
ビリツカッタもんは、デッケェ 坊主頭の大入道の背中だった。
坊さんは海へ落ちちゃーなんねぇと、必死に大入道の手がムクムク
のびてきて、坊さんの尻に手をかけて、しっかりとおぶってくれたって。
「やい、大入道、なんでオレを おぶーんだ。そろそろ地上へ
おろしてくれ!」
「いいじゃ、いまちっとねてな」
そう言われた坊さん、大入道の背中でグースカ グースカねこんで
しまった。
チュンチュンとスズメがさえずって朝になったって。
「ありゃー助けてくれーッ。おーいッ誰か助けてくれーッ」
なんとまあ、この坊さん。フジツルの巻かさったデッケェ木の枝の上
で手足をバタバタやりながらチョコランとのっかっていたーってさー。
「ありゃ、りゃ?さては、ユウマのワイワイギツネにばかされたかな?」
今でも寂しいところです。
お願いしますコンッ!