ひとつの芝居を公演するというのは終幕に至るまでに、共演者達と物凄く濃い密度の時間を共有することになる。
稽古開始から数えて丸2か月。芝居の内容以外にも様々なドラマが生まれるのは当然と言えば当然の事だろう。
総勢50人近いとも言えば尚更だ。
今回はその中で生まれた小さなドラマをいくつか紹介していこうと思う。
題して、『踊れ、てめぇら!!』始まり始まり。
・心のダムがカチ割れるその時
顔から人の好さがドロドロと溢れる男、鼻から上の毛は薄いが鼻から下の毛は濃い男、飲み会の席になるといつも男に接吻を迫られる男、TPCの消極的な松岡修造、汚いメロンパンナちゃん、とまぁ数々の異名を持つ男、その名は阿部秀範(権助)。通称アベ氏。北斗の拳のザコ敵がぶっ飛ばされて叫ぶ時とおなじ音で呼ばれる男、アベ氏だ。
様々な異名を持つほどの彼の皆からの愛されっぷりとは目を見張るものがある。
どれほど愛されているかというと、七味を目に入れられたり、捻挫するまで小石をぶつけられたり、突然胸毛を毟られたりetc.etc(イジメにしか聞こえないけどイジメじゃなくて愛なんだよ?はーと)
が、しかし!なにより凄いのはこの男は怒らないのである。これだけのことをされ続けても怒髪が天を衝かないのである。この男の心のダムは宇宙より広いのかもしれない。俺も襟を正さざるを得ない。
がが、しかし!!今回稽古期間中に、この男のダムを決壊させた者がいる!
その名は、福田貴之(A凜太郎) この男である。
それは、通し稽古の帰り道、腹が減り飲酒欲求を抑えられない者どもが餓鬼の如くわらわらと某居酒屋に集まる。
ひとしきり料理が出揃い、1.2杯程空けた頃だろうか(コーラを)事件は起こる。
まだ春本番とは言えず肌寒いことや、なんとなしに人肌恋しい季節なのがこの料理を選んでしまった原因に他ならない。
そう、鍋だ。もう察しのいい方にはお解りだろう・・・
鍋+アベ氏÷皆の愛情=ダチョウ倶楽部!!の構図がッ!!
もうね、鍋が煮えてきたあたりから福田の悪魔的笑顔が走る。
福田「・・・煮えたよぅ、アベさん!ほらッ食べさしたげる!!」
アベ氏「ちょッ・・やめッ!・・・ぶあっちゃあぁぁぁぁああああああ!!!!このバカっ!!!やって良い事と悪い事があるだらぁぁあああ!!!」
心のダムが決壊した瞬間である。
即座に火傷を心配した田中佐季(A死神)が空きグラスの中から氷を渡そうと「アベさんコレッ・・!」
「いるかあぁ!!こんなもんッッ!!!」と氷を叩き付けるアベ氏。
いわゆる、惨事である。
そんな中、当事者の福田といえば爆笑が止まらずアベ氏が平静を取り戻すまで笑い続けていた。
アベ氏のダムを決壊させた唯一の男の名は本人の自覚がないまま伝説と化した。
・尻がそこにあるから・・・!
踊れや、弥七!座組構成メンバーの約7.8割は女性である。
さらに言うなれば、ダンサーも女性のみ。さらにさらに言うなれば、役者も芝居感を養うためのカリキュラムの中にダンスを取り入れている演者も少なくない。
なにが言いたいのかというと、要は「良いケツしてんな姉ちゃん」である。
Goodなケツがそこら辺を闊歩しているのである。両手両足の指の数を超えるGreatなケツが。
そのExcellentなケツの森の中で数日間過ごしていたわけだ。
当然沸き起こる欲求があるが、そこは良識ある大人の男として超えてはいけないボーダーラインをキチンと守りつつ慎ましく生活していた・・・・のだが。
ケツの森の住人(女性)は平気で人のケツを触ってくるのである。
青木舞子(おりん)、田中佐季(A死神)、野崎衣里(Aお志乃)この者たちだ。
時にサワサワしてきたり、時にムンズと掴んできたり!!
芝居の舞台は男尊女卑な江戸時代ではあるが、俺たちが生きるこの世界は現代だ当然だ。
男女雇用機会均等法もとうの昔に施行され、女性党という派閥もある!今じゃ引っ越し業者だって女性スタッフも多い!なでしこJAPANは世界一だ!
要は男女平等なのだッ!!!
当然、触られたのだから・・・・・・・・・ゴクリ・・・・・・
が、しかし田中佐季は平気な顔で「No!No!ダメ、ゼッタイ!」とかぬかしやがる!!
やっッかましぃぃぃいいいいいい!!!!!!!!
こちとら脳内麻薬出っ放しじゃぁい!!
とか、言いつつもチキンな僕はWonderfulなケツに触れずに幕を閉じた。
・アンタが案内したんだかんねッ!
ろっぽん座という居酒屋がある。今回公演を行った劇場から歩いて5秒のところにある店だ。
生ビールが1杯200円、コーラ専用クーラーまで完備しており居心地の良さではどこの店にも負けない。チーム弥七の心の拠り所といっても過言ではない店だ。
ろっぽん座のママ&板長さんはとても俺達を応援してくれており、公演のスポンサーにまでなってくれ、挙句打ち上げの為に店休日に店を開けてくれるとても素晴らしい方々だ。
余談ではあるが、俺は酒を一滴も呑まない。否、呑めない。故に呑みの席では毎回コーラを頼むのだが、ソレを知っているママは、終ぞ一度も注文してないのにグラスが空きそうになると瓶が補充され椀子そばよろしく、結果8杯のコーラを飲ましてくれたりもした。サービス精神あふるるママさんだ。
話を戻す。
小屋入りしてからというもの、毎日ろっぽん座に顔を出す日々が始まった。当然ママも観劇に来てくれる。「あたしの席は5列の4番の席だかんねー!気付いたら合図送ってよー!!」などという会話が毎日のように繰り広げられていた。
可愛いママさんだ。
公演三日目のことだ。場内での案内係を務めていた俺の前にいつもより少しお洒落をしたママさんが現れた。
連日会話の中で席の事は言っていたため、即座に席までエスコートする。「開演まであと20分あるからちょっと待っててね」「はいよー」なんていう会話があり、俺は案内係の仕事に戻った。
開演時間が迫るにつれ、席も埋まっていき、問題のチケットを持つ客が現れた。
そう、5列の4番が刻印されたチケットを持つ客だ。
急ぎママの席へ行き、
「あの~・・ママ?チケット見せてくれる・・・?」
「ん?なぁに?・・・ゴソゴソ・・・・んまッ!!!」
チケットを見るとキチンと刻印されている・・・・・
4列の5番・・・と。
カァーーッと恥ずかしそうにしているママは、こう発した。
「あんたが案内したんだかんね!?あんたが案内したんだかんね!!ね!!??」
ママは時代の荒波をこの素晴らしい責任転嫁能力で生き抜いてきたのだろう・・・。
見習わなくては・・・!俺は脱帽するとともに襟を今一度正した。
そして赤面顔のママは照れ笑いを浮かべながら言う。
「・・・・・恥ずかしいから皆には言わんといてね」
なんて言っちゃったりする、可愛いママだ。
いや、言うけどな。
続くかも・・・・・?
