陣痛がこない・・・・
それからの記憶がわたしはあまりなく
時間は刻々とすぎるばかり
わたしはありったけての思いをこめて
『信じてる！』と大声で叫ぶ
その声でみんなの意識がかわったそうで
そのときまたいたみがきた
そうまた陣痛がきたんです
体制をととのえようと
なにかつかまるところを探す
西山がぱっとうでをさしだす
彼につかまりありったけの力で
風呂に腰をおとして
『うぉぉ～』と
地響きのような声をだし
赤ちゃんの頭は無事にでできました
お風呂にへたりこみ
産まれてきた赤ちゃんを見ると
顔が真っ青で
産声をあげない
『まなちゃん』
『まなちゃん』
みんなで名前をよぶ
背中をさすり鼻につまってる汚物を
口からすってはよびかける
わたしはというと出血がひどかったのか
貧血状態で意識がもうろうとする
ゆっぴぃがよびかけてる声を
聞いているのが精一杯の状態
やばい
しっかりしないと
意識がもうろうとするなか
『まなちゃん息をして』
そんなことを呼びかけてたとき
ふっと聴診器をおもいだし
『よしかつさん聴診器もってきて
赤ちゃんの心臓の音をきいて』
聴診器で赤ちゃんの心拍を確認
『心臓が動いてるよ』
みんながホッとした瞬間だった
何度も呼びかけるのに
まだ産声をあげない赤ちゃん
西山が聴診器を鼻にかざしてみると
『スースースー』
『寝てる？』
『えっ！寝てるの？』
赤ちゃんはそれから
2時間ヘソの緒をつけたまま眠り続けました
続く
