(昨日から続く)
彼女は座席に座ったまま、周りを気にせず、右足をタイツに滑り込ませた。
さっと履けるとおもったのであろう。
左足を履くために、ショートパンツの中をくぐらせて左側に引っ張り出すつもりで居る。
彼女は回りの目も構わず、ためらわずに、短パンの中へタイツを送り込む。
傍から見ればかなり恥ずかしい仕草であるが、彼女はまったく気にしてなかったので、
いまここで紹介してる。
ごしごしと手を抜き指して無事反対側に顔を出したタイツに、片目で見てる私も、まずは安堵する。
短パン左足の裾にはみ出したタイツに足が入れば、完成だとばかり私も彼女も思っていた。
しかし、がんばるがなかなかうまく行かない。
つま先がそこまで届かないのである。
見てるほうも手伝ってあげるわけには行かず一緒にいらだってるのは私だけではないだろうか。
少なくとも彼女の回りに座っている人間には見えるほどおおっぴらに行っているのだから。
彼女の苦戦をみて はっと気がついた。
ショートパンツを履いたまま、その下にタイツを履くことができるとばっかりおもっていたが、
ふと疑問が湧いてきた。
できそうな気がするし、無理なような気もする。
それも一万メートルも上空で、航空機の座席に座ったまま行うのである。
そんなのできたらギネス物だな、、なんて考えながら薄目で見させていただいた。
左のモモの付け根にぶら下がったタイツに左の足を入れなければならない。
足が無事入ったとしても、その後もどうするのであろうか。
さてどうするのか? 足が入れば万々歳なのだが、 まずつま先がそこまで届かないのである。
外人さんはあまり人目をはばからないと聞いていたのであるが、かなり大胆な作業を行ってる。
頭にちょこっとピンクのリボンをつけた若い女の子が到着まで9時間もの長丁場を
あきさせないパフォーマンスを演じてくれるのはありがたい。
まして美人さんとまでは行かなくとも若くて可愛いお嬢さんなのだから、なおさらである。
金髪につんとした鼻、年頃、どれをとっても
その昔、「Leon」という映画にでてきたあのお嬢さんのイメージである。
放って置けなくなり、つい「おじさんがお手伝いしましょうか?」なんて言ってしまいたくなるほどの
奮戦ぶりである。
結局、黒いショートパンツの左側裾からピンクのタイツをはみ出させたところで固まってしまった。
知恵の輪をやってる人を後ろから覗いているかのような気分である。
そうじゃない、違うよ、そこはそうして、、なんて気が気ではないのである。
彼女は決心したらしく、左モモから垂れ下がったタイツを右側に引っ張り出し
せっかく、ぴちっとはいた右の足からも脱いでしまった。
どうやら思い切って短パンを脱いで履いた方が早いと判断したようである。
スリッパも履かずにハイソックスのままトイレに向かった。
もちろん手には厚手のピンクのタイツを持っている。
もう少しがんばって結論を出して、欲しかったのであるが、残念ながらあきらめてしまわれた。
なんだかもう少しでできそうだったのに、と思うと、とても残念であった。
もし、彼女が続けて、この問題を無事解決することができたならきっと我慢できずに
ブラボーって、立ち上がって拍手を送ってしまったかもしれない。
そう考えると、未完成でよかったのかも知れない。
ピンクのタイツを履いて戻ってきた彼女は何事もなかったような顔をしている。
恥ずかしかったような顔を期待するのは日本人だからなのか?
それにスリッパもつけずにトイレに行ったりきたりするのを気にかけるのは私だけなのだろうか?
彼女がすっきりした様子で寝に入った後も、短パンを脱がずに、タイツを履くのはできるのだろうか?
こうすればできるのではないか、いやできない、、なんて頭の中はフル回転で眠りにつけない。
場所が場所であれば、覗き見をしているという光景なのだが、
狭い飛行機の中の斜め前の席であるが故、見まいとおもっても見えてしまうのである。
私にできる努力といえば、見てませんよ、なんて居眠りの体裁をとるくらいであり、まったく無力である。
そう、節電のおかげでどこでも暑く感じられる日本と電源がことなる機内のエアコンとの
温度差が出てくるので旅行なさる方々はご注意をして欲しい。
寒さよけの着替えをバッグに忍ばせておくといい。
若い方であれば、そのときは、ホットパンツよりスカートにすればこの問題の一つは減らせるだろう。