いつも「わたしの」横に居てくれる人

霜村三二『やわらかな教育をもとめて』(自費出版)

 著者・霜村三二さんは、私より一回り若い。詩が好きで、言葉遊びが大好きで、お酒が好き。そして、宮澤賢治が好き。退職してから何度も彼の案内で花巻を回ったし、私の夏のゼミ合宿は彼の案内で賢治ツアーだった。二人だけで賢治のデザインした花壇を探して、ある病院の中庭に入ったら、(いじわるな)職員さんにサッシのカギをしめられて閉じ込められたこともあった。私の下町飲み歩きの指南は三二さんであった。飲めない酒を、楽しく(安く)飲めるよう、導いてくれた。

 彼は日刊学級通信「らぶれたあ」を出し続けてきた。それは手書きである。飲み屋で書いていることもあった。退職したときに、それを(日刊通信)ブログとして続けるように勧めた。「らぶれたあ」は、「国民的財産」であるからと。三二さんは、それから毎日書き続け、発信し、つまり発言しつづけてこられた。

 この本は、2014年~2017年の記録を整理したものであるので、つまりは第2、第3が出され続けるということである。この本は日本の教育の現状に対する告発であり、その鋭い焦点は、現場を支配する「○○スタンダード」にある。いま、どこの現場を歩いても、教室の黒板の上、右の掲示板、左の掲示板を見ても、同じ場所に「教育目標」や「声の大きさ=尺度表」、「良い子のやくそく」などが張られている。「黙って食べ、黙って働く(掃除する)」。おもしろくともなんともない。不登校が増え続けているのもさもありなん。コロナが一層拍車をかけた。

 もう一方、この本は、「希望の書」でもある。若い教師・学生たちの声に耳を傾け、語りかけ、その横にずっと座り続けて、頷き、励ます三二さんが、聴きとった若者の本音が記録されている。それを読んでいると、温かいものが心を満たす。ここに「希望」がある。

 自負出版なので、書店には並ばないが、きっとあなたの周りでこの本を広めようとしている友人たちがいるはずです。ぜひ手にとって下さい。元気が出ますよ。1,000円

 

西郷南海子『ママは駄菓子のじゅうえんや』

かもがわ出版 2024.2

 著者・西郷南海子さんは、2015年の「安保関連法に反対するママの会」のリーダーとして知られている。小・中・高校生3人の子どもを育てるシングルマザーだ。

 書名の駄菓子屋とは、組み立て式の裁縫箱だ。開くと魔法のように駄菓子が現れるというわけ。子どもたちもびっくりして集まってくる。そこで、食べ物を口にしつつおしゃべりが始まる。普段は聞けない子どもの声も拾えるというわけだ。「10円で仕入れて10円で売る」からもうけはない。でも、ちゃんと路上販売に関わるルールにのっとって活動している。

 子どもの安心の居場所、のびのびと遊べる場所はどんどん少なくなっている。公園は○○禁止の看板ばかり。学校も、家庭も良い子を求める。「子どもの意見表明権」などどこの話という状況だ。西郷さんはPTA会長を5年間もやっている。

 息子が2年生で白血病になる。そして、院内学級の存在を知る。道徳教科書の「小児がんでなくなった少年の実話が「命を大切に」にという教材になっているのを知って、教科書会社に申し入れをする。

 西郷さんは、この本のひとつのテーマは、「一人でも行動する」ということだと書いている。「黙っていない」ということだ。

「自分が知っている範囲の子どもを見守るだけでは足りないのだ…。自分自身がテリトリーを出て路上に出て、出会いをつくっていくしかない」と書いている。

「宇宙は子どもの手のひらに乗っている」ということばもいい!

「いっしょにやろうよ!」「あなたにもできるよ!」と、呼びかけている。すいすいと読んでしまった。おすすめです。

孫と読んだ絵本3冊

 今日(2月1日)は、孫のカイ(1年生)の学校は凧揚げ大会だ。晴れて、風があったから最高の凧あげ日和だったことだろう。その前の晩、カイとお布団に入って3冊の絵本を読んだ。

 『すずめのくつした』(大日本図書2010年)は、小さな靴下工場の男の子アンガスが冬の日、寒がっている仲よしのすずめに靴下を編んであげる。すると、次の日には町中のすずめがやってきて、「ぼくにも」「わたしにも」ということになる。暖かそうな靴下をはいたすずめたちを見た町の人びとはそれを買い求めて押しかける。つぶれそうだった靴下工場は元気を吹き返すという話だ。ちょっとまとまった、入門期の物語絵本だ。

『とべ! ちいさいプロペラき』(福音館書店2000年)は、孫たちの大好きな絵本。初飛行に飛びたつ前の日、格納庫に入ってきたジャンボジェット機に委縮したプロペラ機をジャンボが励ます。

「げんきをおだし、プロペラくん。ひろいそらでは、ぼくらのおおきさのことなど わすれてしまうよ」

 プロペラきは、胸をはって、どこまでも、どこまでも広い空を飛びます。明日の用意を整えたリュックの上に乗っている飛行機はお正月のプレゼントに贈ったもので、ライトがピカピカと点く。

 おしまいは、『すてきなあまやどり』(徳間書店2003年)。たくさんの動物たちが大きな、大きな樹の下であまやどりをする、楽しいお話。あちこちで集会などでやってくれたアニマシオンの絵本。

 読み終わると、すぐに眠ったカイは、大空の下で、凧あげをしている夢を見ていたことだろう。いや、ちいさなプロペラ機になって、ひろい空を飛んでいるかな。

 

『ドアのむこうの国へのパスポート』

トンケ・ドラフト&リンデルト・クロムハウト作

リンデ・ファース絵、西村由美・訳

岩波書店23.4 1800円+税 杉並図書館

オランダから、とてもうまい仕掛けで子どもたちを本の世界へ誘うファンタジー。すぐにアニマシオンが一つ、二つ……。(なんでも、アニマシオンを尺度とするのは身についた習性!)

舞台はマックス・ベルジュイス小学校4年生のクラス。10人の子どもたちが集められている。「大人数のクラスでは、居心地が悪いと感じていた子どもばかり」。担任は毎日読み聞かせをしてくれるトム先生。「トム先生が本を読んでくれるときだけは、みんなしずかになる」。みんなの大好きな本の作家、ラヴィニア・アケノミョウジョウに質問したいことを手紙にして送ると、二人だけ家に来なさいと返事が来る。ラウレンゾーとテヤが代表となる。その家には、「不思議な部屋」があって、その中はコスモポリタン連邦という小さな国々の集まった世界があるという。しかし、そこに入るには、パスポートが必要であり、さらにそれぞれの国からのビザが必要だという。まず、パスポートの申請書を書かなければならない。

ただし、12歳より年上の人は対象とならないと書かれていて、トム先生は申請できない。

「コスモポリタン連邦は、有名な子どもの本の国々からできている」ので、その国のビザをデザインして送れと指示される。そのために子どもたちは本を選んで、なぞなぞ考え、デザインを添える(写真を参照ください)。こうして、子どもたちはトム先生と作家との仕掛けに乗って、本を読み、その国へ想像を広がせていく……。(そこから先はご自分でお読みください!)

ラウレンゾーの視点で語られる。ラウレンゾーはママと二人暮らし。パパは新しい妻と双子の子どもとイタリアで暮らしている。パパはぼくのことをどう思っているのだろうといつも考えているが、ママには心配かけたくない。そういう事情も進行していく。

読書へのいざないのヒントがいっぱい。

『ガウディさんとドラゴンの街』

作 パウ・エストラダ、訳 宇野和美

共育評論社23.12

 宇野和美さんの新しい翻訳絵本が出たので、早速に図書館でゲット。なにせ、追っかけなので……。

 ガウディさんはサグラダ・ファミリアというカラフルで不思議な、というか魅力的な教会で有名だ。ガウディさんは入口にとても愛嬌のあるドラゴン(これもカラフルなタイルを身にまとっている)が迎える公園に住んでいる。公園はエウセビ・グエル氏の持ち物で、そこにガウディさんとグエルさんの家がある。ここに庭園式住宅(マンション)を建てたが、あまりに奇抜な設計でだれも住もうとしない。しかし、グエルさんは決断する。

「住宅地をやめて、ここをみんなの公園にしよう。子どもたちが遊び、家族が集う場所、地元の人にも、世界じゅうからこの地を訪れる人にも開かれた、みんなの公園にな」

 公園はバルセロナ市に寄贈され、ガウディさんの家は記念館に、グエルさんの屋敷は小学校になっている。親しみ深いタッチの絵と語りだ。

 そうそう、私はアニマシオンを始めた20年ほど前、クラブの仲間とバルセロナに行って、グエル公園やサグラダ・ファミリアを見学して歩いたことがある。光を活気にあふれる街だった。

 朝の散歩は近くの都立善福寺公園の2つの池を回ります。先日初めて薄氷がはりましたが、今はありません。いろいろなカモが来ています。カイツブリの潜る姿がが楽しいです。

 さて、梅が咲き始めました。ここでは白い花から開き出しています。今、色どり鮮やかなのは、黄色のロウバイ(蝋梅)。そしてボケ(木瓜)です。写真は民家のもの。狭い花壇にしっかり根を張ってまっ赤に咲いています。とてもきれい!

 でも、なんだかなぁ……。「ボケ」とか、「ロウバイ」とか……。

こやま峰子詩集『さんかくじょうぎ』

銀の鈴社2923.12 4刷

こやま峰子さんは「読書のアニマシオン研究会(アニマシオンクラブ)」発足以来、ずっとご支援いただいている詩人だ。身近なものを題材にして、平易な言葉で、新鮮な視点から切り取って見せる。あざやかで、親しみ深く。

 

「      月

 

 雲のうんだ たまご     」

 

 これが、光村図書4年国語に収録された作品だ。

 わお……⁈ という声が出そう。発想のユニークさも、すらりとした切りとり方も。

 本のタイトルとなった作品は、

 

「     さんかくじょうぎ

 

  おとうさんの/おこっているときの目

  おそる おそる/ごめん……ね

  と

  まるい ひとみ/のぞけば

  かがやいている/三角形の鼻

  いまにも/わらいだしそうな

  三角形の口                 」

 

 声に出して読むと、味わいが深くなる。

― 詩は、リズム(心地よいリズム)、リサウンド(いい響き)、リリシズム(美しい情感)、リアリズム(リアリティがあってはじめて子どもに共感してもらえる)の4Rよ。―

と、くりかえし語られていた。こやまさんの詩集を読むと、そのことが腹に落ちる。

 『さんかくじょうぎ』(銀の鈴社)は1983年11月初版で2023年12月4刷となった。『ぴかぴかこんぱす』(大日本図書)は8刷となった。おめでとうございます!

 こやまさんは今年、米寿を迎える。ますますのご健康とご活躍を!!!

2024年元旦 杉並区の井荻八幡宮へ初もうで こ

2024年が明けました。どんな一年になるのでしょうか。

できることを、根気強く一つひとつ。

散歩と読書とアニマシオンー

これが私の今年のモットーです。

今年もよろしくお願いします。

岩辺泰吏

「少年院の数学教室」

『僕に方程式を教えてください』

高橋一雄、瀬山士郎、村尾博司

集英社新書2022.3

 これは、少年院における教科教育の実践を通して「非行少年たち」の人間回復を図った記録である。この本は、私を打ちのめした。そして深く反省しつつ、そういう思いを超えて深く深く感動した。ぜひぜひ読んでいただきたい。

 高橋さんは1961年生まれ。数学指導者、つまり実践家。瀬山さんは1946年生まれ。数学教育者(群馬大学名誉教授)。二人は当時、群馬県赤城少年院院長であった村尾さん(1,959年生まれ)から数学の指導を頼まれる。そして、初めて少年院を訪れる。これが「物語」の始まりである。

 村尾さんは少年院の教育は「三重苦」を負っていると言う。少年院の在院はおよそ11か月である〈時間的制約〉、入院はばらばらの〈さみだれ入院〉、基礎学力の低さと学力差の〈基礎学力の問題〉。しかし、彼らは学びたいと願っており、学ぶ喜びと分かっていく喜びが自信となっていく。

 高橋さんと瀬山さんの二人は、彼らのプライドを尊重し、小学校算数の復習ではなく、「一次方程式」が解けるようになることを目標とし、「数学の言葉」で語ることを貫く。

18~19歳の少年を対象とした数学教室では、高認試験(かつての「大検」)合格者を出していく。その過程は本を読んでもらうのが一番の説得力です。

 さて、瀬山さんが、なぜ数学かをこう書いている。

「学問としての数学の性格は、数学の学びを急速に日常生活から引き離していく。もちろん、他の学問でも同じことです。しかし、理科などはその離陸の滑走路がとても長いのに対して、数学は小学校の分数や比あたりから急速に離陸を始める。ここに数学のひとつの特徴があります。抽象化が一気に進むのです。……

人間は抽象的なものについての想像力を持つ。そして、数学はその想像力を駆使する学問です。私はこのことを少年院に限らず、数学を学ぶすべての子どもたちに伝えたいと思います。」

「18,19歳の少年たちが少年院という更生施設の中で数学を学ぶ機会を持てたことは、私達が想像している以上に大切なことです。それは少年たちにもう一度学ぶことの大切さ、面白さを思い出させ、学びを通して人とつながることの大切さを感じさせ、想像力を通して外の人とつながっていく感性を養い、彼らの心を耕すことにつながると確信しています。」

村尾さんは、「学びには生きる力が宿っており、人生という航海を続けるためのお守りになるのだと信じています」と書いている。

ここにはその具体的な姿が書かれている。こんな事実も書かれている。

瀬山さんが数学講話で素数の話をしたときに、三つ子素数は3,5,7だけしかない、照明は難しくないがここでは証明しないと話した。後日、担当教官を通じて一通のレポートが届けられた、そこには見事な証明が書かれていたと。

高知の友人で、高校入試のための補習塾を開いていた森尚水さん(故人、通称「まめだ先生」)が、中学3年生しか受け入れない、特に地域の養護施設の子たちを受け入れていると話しながら、絶対に「希望する高校に合格させる」と胸を張っていた。森さんは小学校教師だったが数学が専門だった。そのコツは方程式にあり、たくさんの低学力中学生のつまずきを分析して構築した指導法があるのだと話していた。学びはじめると、彼らは施設から1時間ほどを自転車でやって来るのだが、雨降りでも休まずに来るのだと。

森尚水『希望 まめだ先生と朝倉ゼミナール 低学力を克服した奇跡の30年』(リーブル出版2011年)もぜひお読みいただきたい。

―心の扉には取っ手は内側にしかついていません。外側には取っ手がないのです。

          谷昌恒(北海道家庭学校第五代校長)

今回の『ビッグイシュー』(12月15日号)は「からすのパンやさん」50周年特集です!

『からすのパンやさん』は1973年刊行。50周年になりました。かこさんの長女で加古総合研究所代表の鈴木万里さんがインタビューでその制作の背景を詳しく話しています。絵本には84種類のパンが出ていて、人気投票ではかめパンが一位だったそうです。かこさんはカラスが好きだと話していたそうです。戦中戦後の子ども時代にはパンは憧れの食べものだったという。続編が楽しみだという子ども読者の期待に応えて40年後に4冊の絵本を出しました。今は未発表作品を含めて童話集が発刊されていて、全10巻になるという。「越前市立かこさとしふるさと絵本館」も紹介されています。450円。どこかの駅頭で販売員を見かけたらぜひ購入してください。450円

私の好きな連載は、「ホームレス人生相談」です。これは「一般の人」が悩み事を書いて、ホームレスの人が応えるのです。今回は「『死』と『お墓』について」です。

「浜矩子の新ストリートエコノミクス」は「国際大量発行異存の経済対策は詐欺まがい」。「池内了の市民科学メガネ」は「古くから珍重されたユズ 冬の楽しみ、香りには鎮静効果」です。