北海道室蘭市内で先月予定されていた視覚障害者らの
卓球交流会が、盲導犬同伴で宿泊できるホテルが見つ
からないとして中止になっていたことが、一部新聞に
て報じられました。

身体障害者補助犬法は盲導犬の受け入れを義務づけて
いますが、会場近くの3軒のホテルが受け入れを拒否
するなどしたため、主催者側が交流会の開催を断念し
たとのことです。

この卓球交流会は、視覚障害者の有志が主催し、
10年ほど前から小樽や函館など道内各地を巡回して
開かれてきたもので、視覚障害者は介助者か盲導犬
を同伴させて参加。これまで大会が中止になった例
はないといいます。

2002年に制定された身体障害者補助犬法では、国や
自治体が管理する施設のほか、電車、バスなどの公
共交通機関、そしてホテルやレストラン等の不特定
多数が利用する民間施設において、補助犬を同伴し
ての利用を拒否できないこととなっています。

しかし、同法は罰則がない「努力規定」であるため、
盲導犬をはじめとする補助犬の同伴が断られるケース
が後を絶ちません。2008年に行われた身体障害者を
対象とする兵庫県の採用試験では、車いすで生活する
女性受験者が介助犬の同伴を希望しましたが、「他
の受験者に犬が怖いとかアレルギーの人がいる可能
性もある」として認められませんでした。2010年に
は、香川県内で行われた「全国盲導犬使用者交流会」
の最中に、高松市内の讃岐うどん店を訪れた視覚障
害者が入店を断られたケースも報じられています。

今回、宿泊を拒んだホテルは、数年前に宿泊客がペ
ットの犬を持ち込み、ふん尿の臭い等で迷惑したこ
とがあると言いますが、盲導犬は他者に迷惑をかけ
ることがないよう特別に訓練されており、その意義
も含めてペット犬と同列視することに大きな違和感
を覚えます。

卓球の球の中に金属粒が入った特殊なボールを用い、
その音を頼りに打ち合う「サウンドテーブルテニス」
は、視覚障害者が参加できる数少ないスポーツの一
つ。交流会の中止に多くの障害者が落胆したことは
想像に難くありません。法整備から10年余りが経つ
ものの、ホテルや飲食店などの民間施設の盲導犬へ
の理解は十分とは言えず、盲導犬が活躍できる社会
の下地づくりが引き続きの課題です。