大晦日。
日中、どたばたと色んな人に会い、夜、ぽつんと時間が空いたので、
石巻事務所の面々と紅白歌合戦の長渕剛の中継を見に行くことに。
皮肉にもステージは、僕らもよく知る門脇小学校。
少し大人げないと思いながらも、観覧者席とくくられたロープから少し離れ、
僕らは一緒にいたメンバーの家が「あった」場所に残ったコンクリートの基礎に座った。
彼が生まれ育ち、家族全員を失ったその跡地から、長渕が現れるのを待った。
「あそこにぽつんと残っている鉄筋の建物はケーキ屋さんだったはず」とか、
「ここに居間があって、ここが台所で、あの日ここに父が居て、母が居て、妹が居て」
なんてやりとりを、まるで当たり前の日常会話のように応酬していた。
実は、彼の失くなった妹さんの誕生日が近かったため、
別の現場が早く終わり、時間が余ったメンバーが、彼の家の跡地を清掃してくれていた。
「こんなにきれいに片付けてくれたんですよ」
玄関だった場所から、ゴミやガレキが排除され、ほうきで掃かれ、
綺麗な白いコンクリートの階段が3段、顔を出していた。
1月から就職先が決まっている、若いメンバーの仕事だった。
「彼は辞める前に、本当に良い仕事をしていったなぁ。」
僕とエリアマネージャーは、白い息に言葉を乗せて、心から感心した。
そんな夜。
悴んだ手に息をかけ、NHKにラジオを合わせて長渕を待つ。
左手には逞しく煙上げる製紙工場、その頭上に月、
背後に海の香りと、失くなった町、潰れた車、付かない信号。
目の前の廃校に白いスモークが集れ、長渕が現れる。
知らない歌だけど、震災後に書いたらしい、優しい歌が夜に溶ける。
さらっと1曲終わった後、長渕は大きな声で激励を飛ばして去った。
僕らは年甲斐もなく駆け寄って、「ありがとう」と叫んだ。
そのありがとうは、長渕剛だけでなく、2011年、お世話になった方々、
皆さんに対するありがとうだったような気が、今なんとなくします。
ぎりぎりの心の中で、キャッシュフォーワークのチームは動いているから、
励ましてくれる人、遊びにきてくれる人、応援してくれる人、
皆さんに本当に、心から感謝をしています。
帰り道、地盤沈下した悪路を、「乾杯」とか「とんぼ」とか、
僕らの知ってる限りの長渕の、サビの部分だけ、歌いながら車に戻った。
2011年の最後の夜
なんだか楽しい夜を過ごさせてもらえたなぁ。
ありがとう。
プロジェクトマネージャー 服部