会陰切開&縫合の痛みは想像以上…陣痛なみの恐怖もいまではいい思い出:NET記事。

 こんなNET記事を見ました。

 わたしは不妊治療専門とする前には一般産婦人科医としてお産、手術、など通常の産婦人科をしていました。出産は好きでしたから比較的長く産科医療には携わっていました。

 

 私自身、会陰切開にはこだわりがありましたから、これから出産される方が会陰切開を怖がられないように、また若い産科の医師が痛くない(出産時もまた産後も)会陰切開ができるよう、書きたくなりました。

 大切なことは、通常の出産(経腟分娩)では、まずはじっくり待つ(胎児心拍に問題がない限りです)ことです。そうすることで子宮頚管も外陰部も柔らかくなります。

 細かなことは書きませんが、分娩が近くなれば会陰切開をする部位に局所麻酔薬を注射します。

 切開前に注射することが重要です。

 切開部位は正中(真ん中)です。側方を切開すれば傷も汚くなりますし、縫合もしにくくなります。そして何より産後の傷の痛みが強くなります。また、傷のひきつれが強い分、傷の治りも遅くなります。

 正中切開と言うと直腸まで破れるのではと怖がられるのですが、わたしは長く正中切開をしていましたが4度裂傷(直腸が損傷する傷のこと)を正中切開で起こしたことはありません。

 正中切開の後は傷も左右対称ですから縫合もし易く、ひきつれなくきれいに縫合することが可能です。産後の傷の腫れも少なく、傷の治りも早いです。その後の傷跡も分からなくなります。

 わたしは吸収糸で縫っていましたから抜糸の必要もありません。それも1本の長い糸で縫いますから、出産の翌日に外陰部を見ても、会陰切開をしたかどうかわからないぐらいです。

 

 会陰切開を必要以上に怖がられることはありません。適切な時期に会陰切開をした方が、赤ちゃんにも良いですし、何もせずに破れた腟壁より、傷もきれいで治りも早いです。

 以上が私の会陰切開に対するこだわりです。

 

 なぜ不妊治療専門の医者がこんなことを書くかと言えば、これは採卵でも同じことなのです。

 できるだけ患者様の痛みを少なく、そしてできるだけ良い結果を生むように行う。これが医療の本質だと思っています。

 産科医療でも不妊治療でも同じことです。できるだけ痛みは少なく、そして患者様の益になるように。

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