どんなに効果的な卵巣刺激をしても、うまく採卵をしなければ元も子もありません。体外受精の中でも採卵の技術は非常に重要です。
なぜなら、打つ球が多ければ多いほど、ヒットの出る確率は高くなるのですから。
現在のデータでは、採卵数15個ぐらいが妊娠に一番有利と言われています。その後の凍結胚移植での妊娠(累積妊娠率)を考えれば20個まで良くなると言われています。では、どのようにして効率よく採卵を行うかです。
麻酔を十分に効かせること。これ、重要です。患者様の精神状態が安定していると麻酔が良く効きます。
採卵室に入ってこられた患者様とお話しすることで、患者様に安心していただくことが大切です。麻酔が十分に効いていれば、不意の体動もなく狙ったところに安全に針を刺すことができます。
できるだけ多くの卵子を採るコツは、カラーエコーで血管の位置を確認して、血管の通っていない所(腟壁も腹腔内も)に針を刺すこと。こうすることで出血の心配なく安心して卵胞穿刺に専念することができます。
出来るだけ穿刺は1回だけで行うことが重要です。こうすることで出血量を少なくすることができます。私は腟壁を一回刺すだけですべての卵胞を穿刺するようにしています。何度も腟壁を穿刺すると、いくつも出血の可能性のある傷ができてしまいます。
卵胞の中心部分に向けて針を刺し、卵胞の中心に胚を置いて吸引することです。こうすることで、最も卵子が採れる確率が高くなります。そして、針を抜くときには吸引を継続して(吸引をストップすると、折角採った卵子が針先から逃げることがあります)、針先を回転させながら抜くことで、卵胞の周囲に残っていそうな卵子を採り残さずに採卵を終えることができます。
卵胞の端っこから卵胞液を吸引すると、卵胞内での液の流れが弱く、卵胞液のみが吸引され卵子は出てこないことがよく起こります。
最後に、空胞などは存在しません。ただ、卵子が採れなかっただけです。
そこには様々な原因がありますから、患者様はその原因が理解できれば納得されると思います。
卵胞の数と同じだけの卵子が採れないことも、そんなに珍しい事ではありあません。その点もご理解下さい。
とはいえ、採卵術、体外受精で最も重要な技術の一つです。