卵子凍結もともとは「代替手段」:NETニュース | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 卵子凍結もともとは「代替手段」 がん治療後などの妊娠のため、学会は慎重姿勢

 との記事が出ました。

 内容は以下のようなものです。(一部改変)

 不妊治療には複数のアプローチがある

 卵子凍結はもともと、がん治療などの後に妊娠の可能性を残したい患者を対象に進められてきた経緯がある。 

 健康な女性の選択肢としても認知されつつあるが、専門家からは慎重な意見が出ている。

 日本産科婦人科学会は昨年5月、健康な女性が将来に備えて卵子凍結することについて、当事者の選択に委ねられる事項とした上で「推奨しない」と明記した申し入れを、支援事業開始を控えた東京都に行った。

 

 卵子凍結を含む生殖医療を専門とする某クリニック院長は、学会の申し入れを「妥当な内容」と指摘。

 その上で、卵子凍結について「30代前半までに行うのであれば意義がある」と話す。当院長のクリニックでは、直近5年で159人が卵子凍結を行い33人が解凍した卵子を活用、9人が出産に至った。

 一方で卵子凍結という〝保険〟をかけつつ、別の形で妊活を行って授かり、結果的に保存した卵子を使用しなかったケースも少なくないという。

 採卵・凍結技術を含む生殖医療は、進歩しているとはいえ「専門医にもやってみなければ分からない分野」。

 若いうちから妊娠・出産や生殖医療関連情報を積極的に収集することや、妊娠・出産・育児を優先できない環境を社会全体で変えていく必要性を訴える。

 

 少子化問題に詳しい某大学教授は、卵子凍結への支援は、今は忙しい、キャリアを追求したいけれども将来は出産したいという人にとっては朗報だ。ライフスタイルの選択肢が増えることは良い。

 ただ、卵子凍結の普及が人口問題を解決するわけではない。問題は、出産・子育てを考える女性が安心してキャリア形成ができるのかということだ。

 

 ノーベル経済学賞を受賞した米国の大学教授によれば、男女間の賃金格差にはいろいろな要因があるが、出産によるキャリアの停止もマイナス材料になると指摘している。産休・育休などの制度はあるが、女性が仕事を離れると不利になることが問題であり、若い人が出産、子育てをしたいと思う制度を作る必要がある。

 日本の合計特殊出生率は1.26(2022年)だが、完結出生児数(夫婦の最終的な平均出生子供数)は1.90(2021年)。結婚後はかなりの割合で出産していることを示しており、非婚化、晩婚化を改める政策がないと、出生率を回復させることにはつながらないだろう。

 以上の記事です。

 

 記事にもあるように、凍結卵子の妊娠率は融かしてみないと分かりません。たいへん不安定なのです。それに対して凍結胚(受精卵)は融解後の生存率も高いですし、融解胚移植後の妊娠率も女性の年齢に応じて予測できます。

 

 卵子凍結、一つの選択肢ではありますが、将来の子供を保証するものではありません。

 その点を十分に理解したうえで実施されることが重要です。