採卵の麻酔について思うこと | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 体外受精の採卵の麻酔について思うことがあります。

 体外受精の保険適用が始まったころ、麻酔費用の設定がないので(今でもそうですが)麻酔を行わずに採卵を実施する施設が多くありました。その理由は、現在一番良いと言われる麻酔薬の値段が高いからです。

 私は、医療で最も大切なのは、痛みの無いことだと思っています。医療の基本は麻酔なのです。

日本では花岡青洲という医師が、はじめて麻酔薬を考案しました。花岡青洲は麻酔薬を使うことで、はじめて乳がんの手術を実施できたのです。皆様もお分かりのように、麻酔なしでは、そもそも外科手術なんてあり得ませんから。

 

 採卵については、麻酔はいろいろあります。

 無麻酔:全く麻酔なしの採卵です。私はこれには大反対です。こんなむごいことはないと思っています。

 体外受精の当初では無麻酔の採卵もよくありました。ところが、体外受精の当初と思っていたのですが、驚くなかれ、今でも無麻酔で採卵している医師がいるのには驚きです。患者様も無麻酔に慣れてしまった方は”我慢するのは当然”と思われていたり、そう思うことに慣れてしまっておられるようです。私は患者様に言いたいです。「無麻酔の採卵なんて嫌です!」っと言ってほしいです。

 

 局所麻酔:患者様の中には「麻酔で眠ってしまうと、そのまま起きられなくなるのではと心配」と言われる方がおられます。どうしても寝たくない方には、局所麻酔がおすすめです。ただし、局所麻酔が良く効くかどうかは、実施する医師の腕に掛かっています。上手な医師であれば採卵されたのが分からないくらいの時もあります。それどころか、麻酔薬を注射されたのも分からないくらいのこともあります。局所麻酔とは、歯医者さんの麻酔と同じと考えてもらえばいいと思います。局所麻酔の上手な医師を選んでくださいね。

 

 静脈麻酔:これは寝ている間に終わる麻酔のことです。ただし、全身麻酔ではありません。静脈麻酔は点滴の側管から麻酔薬を注入するだけでできる簡単な麻酔です。いまではプロポフォールと呼ばれる、牛乳のような白色の麻酔薬が広く使われています。これは今までの麻酔薬に比べ副作用も少なく、非常に良い薬剤です。ただ、卵や大豆にアレルギーのある方には使えません。さらに、この薬剤の値段がやや高価なので一部の医師が使うのを控えるようです。これが、無麻酔採卵を行う医師が増えた原因となっています。

 

 医療の基本は、痛みの無い治療です。みなさま、痛みを我慢する必要はありません。採卵でも他の処置でも、かならず麻酔をしてもらって受けてください。”痛みの無い医療”これが私の医療の基本です。