体外受精の薬剤不足 | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 体外受精の薬剤不足が深刻になってきています。

 体外受精の健康保険適用が開始され、体外受精のハードルが下がったこともあり、患者様の数が全国的に増加しています。

 ご存知のように体外受精には、卵巣刺激により多くの卵子を採取して妊娠率を上げる必要があります。多くの卵子を出すためには排卵誘発剤の注射が必要となります。ただ、排卵誘発剤の注射だけではありません。採卵前に排卵してしまわないためには、排卵防止の薬剤も必要となります。この排卵誘発剤の注射が全国的に不足してきています。場所によっては卵巣刺激途中で薬剤が途切れる可能性があるため、体外受精の件数を減らしているクリニックもあると聞いています。また、卵巣刺激中に排卵防止の薬の投与が必要な卵巣刺激法(アンタゴニスト刺激)ではアンタゴニスト注射(排卵防止の薬)が必要となります。この注射薬も不足しています。卵巣刺激中に排卵防止薬が打てないと、採卵前に排卵してしまい、結局は採卵ができないことになります。いざ卵巣刺激を始めても、肝腎の注射薬が途中で足りない事態が発生しそうなのです。

 排卵防止薬剤については、薬剤はあるのですが、保険の体外受精での使用が認められていません。こんな時には、厚労省がいち早く「有効な代替え薬を使用しても保険適用を認めます」などのアナウンスを出してくれれば、私たちも安心して使えるのですが。そういうアナウンスメントがありませんから、違った方法を試みるか、体外受精を中止するかしか選択肢がありません。

 注射薬ばかりではありません。胚移植後の黄体ホルモン剤(腟剤)も不足してきています。以前は黄体ホルモン注射がありましたが、製造中止となってしまったため、代わりに注射を打つわけにもいきません。

 以上のように体外受精関係の様々な薬剤が不足しています。早急な適用範囲の拡大や承認をお願いしたいものです。