こんにちは!
胚培養士のTsです。
今回の【胚培養士のお仕事】シリーズ全12回のうちの8回目です。

前回の【胚培養士のお仕事】では、培養1日目の受精卵の成長について紹介しました。
培養1日目の観察では、正常に受精しているかを確認しているんでしたね!
それでは、培養を継続した受精卵はどのように成長していくのでしょうか?


今回の【胚培養士のお仕事】では受精卵の成長~培養3日目~について紹介します!



○培養3日目
1つの細胞だった受精卵は成長するにしたがって細胞分裂(1細胞→2細胞→4細胞→8細胞・・・)を繰り返していきます。
このように細胞を数えることができる時期を分割期胚と言います
 



当院では、培養3日目で観察を行っており、多くの受精卵が分割期胚にあたります。
分割期胚は3つのポイントで評価を行います。
①    細胞数 (通常、6~9細胞に成長)
②    細胞同士大きさ (均一なほど良好)
③    フラグメントの量 (少ないほど良好)
(フラグメントとは、受精卵が細胞分裂をする際に発生する細胞断片のことです)

胚の評価は、②細胞同士の大きさ・③フラグメントの量を考慮したA~Eの5段階評価と細胞数を用いて総合的に行っています。

言葉だけだと難しいですね……。

例えば、8Aと評価された胚は下の図のように評価されています。

 

8は細胞数を、Aは細胞同士の大きさとフラグメントの量を総合評価した数値を表しているということですね!



また、培養3日目ではより成長が進んだ桑実胚も見かけられます。
桑実胚は細胞同士が密着して接着(compaction)し始めている胚で、接着の程度により評価を行います。
接着面積が大きい順に、ComA、ComB、ComC、ComDの4段階で評価をしています。
細胞同士が接着している面積が大きいほど良好です。

 



それでは、実際の胚の画像をもとに評価してみましょう。
 

評価について、少しでもイメージしていただけましたか?



3日目で移植を予定している場合は、当院の過去の解析結果をもとに作られた基準に従って、最も状態のよい受精卵を移植に用います。


ここまで胚の評価について紹介してきましたが、必ずしも評価が良い胚の妊娠率が高いのかというと、そうではありません。
現状では、形態(見た目)だけの評価は確実ではなく、形態評価が妊娠率や流産率に与える影響を正確に予測することはできないのです。


大切なのは、評価に関わらず全ての受精卵は妊娠する可能性を持っているということです。


私たち胚培養士は、患者さんからお預かりした受精卵が最も良い状態で確実に移植できるように、培養環境の改善を続けていきたいと考えています。




さて、次回の【胚培養士のお仕事】では受精卵の成長 ~胚盤胞~について紹介します。

4ABってどんな状態の胚盤胞??
胚盤胞の孵化ってどういうこと??

などなどの疑問にお答えしていきます!


【胚培養士のお仕事】シリーズは毎週末に更新を予定しています。

次回もお楽しみに!