紅色の泪(2)の続きです。

 
※この記事は韓ドラが好きすぎて、

ひたすら個人的に楽しむために書いた二次創作品です。ご了承くださいあせる

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「…今の私はどんな顔をしている…?」

 

タルタルがまともに話せるようになったことに胸を撫で下ろす。

 

正面に膝を付き、彼の顔を見据る。

 

宮中中の女達がざわめく程の見目麗しいタルタルの顔は青ざめ、

視線もとどまらず、唇は震えている。

 

「ひどくお疲れになっているご様子…

ゆっくりお休みになれば疲れもとれますでしょう」

 

ペガンを討ったいまとなってはタルタルはヤンの側についたも同然。

 

タルタルがこのような覇気のない顔で宮中に参内しようものなら、

ヤンが無理にタルタルにペガンを討たせたと噂をたてられるに違いない。

 

そうなると厄介だ。

 

ホンダンの答えに、タルタルは納得がいかないとばかりに光のない視線を返す。

 

「鏡をご覧になりますか?」

 

ゆっくりとタルタルがうなずく。

 

ホンダンは自分の荷物から手鏡をタルタルに手渡した。

 

「…はは、ひどい顔だ。親殺しをするとこういう顔になるのだな」

 

手鏡を掴んだ指が大きく震え出し、そのまま取り落としてしまった。

 

鏡の破片が飛び散る音が響いた。

 

鏡の破片を片付けながら、ホンダンは優しい声色で言った。

 

「タルタル様…お辛かったでしょうに…。

よくぞヤン様と皇太子様を守ってくださいました。主に代わってお礼を申し上げます。

ヤン様も、ヤン様に仕える高麗出身の私たちも、皆あなたに命を救われたのです」

 

破片を拾う手に雫が落ちる。

 

見上げるとタルタルが大粒の涙を流していた。

 

「目を閉じると、叔父上の顔が浮かんでくる。だから、瞬きすらできない。

息絶えたはずなのに、叔父上の声がずっと聞こえる。耳を塞いでも…。

間違った道へ進む叔父上を私はただ…ただ止めたかっただけなのに…

なぜわかってくださらなかったのですか叔父上…」

 

「もう…今夜はお休みください」

 

タルタルは思った以上に深手を負っている。

 

薬では治せない心の傷-。

 

あまり刺激してはいけない。はやく安静にさせなくては…。

 

嗚咽するタルタルを寝台へ連れて行き、髪を解いた。

 

冷やした水で濡らした手ぬぐいで、さらに赤くなったタルタルの両目を覆う。

 

「こうすると腫れた目が楽になります。雑用係の頃、故郷を想ってよく泣いていました。

目が赤いまま仕事に行くと叱られるのでこうやって冷やしたものです。

私は…高麗から貢女として宮中につれてこられました。

雑用係になってヤン様と出会い-それからずっとおそばにおります」

 

タルタルはホンダンの昔話に耳を傾けている。

 

思えばヤンと出会ったのはワン・ユの部下として「スンニャン」と呼ばれていた頃。

 

それから再会するまで、

彼女がどんな環境に身を置いていたのかはほとんど知らない。

 

多少は聞き出したが、ヤンが生い立ちをすべてを話したとは思っていなかった。

 

「同僚として寝食をともにし、ずっとそばにいたから…

ヤン様のお心の内は手に取るようにわかります。喜びも、悲しみも…。

ご自分も辛いだろうに、タルタル様に親殺しをさせてしまったと…」

 

ホンダンは家人が淹れてきた茶の香りを確かめると、器をタルタルに差し出した。

 

「これを。気持ちが落ち着きます」

 

タルタルの手はまだ震えている。

 

茶がこぼれそうになったので

ホンダンがタルタルの背中に回り込んで器に手を添えた。

 

「どうぞ」

 

こくり、と音を立てて喉が動く。

 

唾も飲み込めなかったタルタルの中に、温かい茶が入っていく。

 

ああ、本当だ。茶が染みる―

 

 

 

 

 

飲ませたのは眠りを誘導する薬草が入った茶。

 

タルタルはホンダンの腕でゆっくりと目を閉じた。

 

「申し訳ありませんタルタル様…とにかく今は心と体を休ませるべきかと。

どうか、ゆっくりお休みください」

 

飲み干された器を机に置くと、ホンダンはタルタルの手を握った。

 

こんなことなどで震えが止まるはずはないのだが、どうしてもそうしてやりたくなった。

 

同じ主に仕える同志として―。

 


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(3)へ続く