ひたすら個人的に楽しむために書いた二次創作品です。ご了承ください![]()
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戦があろうが親が死のうが、どの時代でも、容赦なく朝はやって来る。
視界を覆っていた手ぬぐいを払いのけると、
タルタルの部屋には昨日と変わらぬ朝の光が差し込んでいた。
ひどく喉が痛む。水が飲みたい。
体を起こすと、ホン尚宮の姿はなかった。
昨夜の出来事は夢かとも思ったが、
手には握られた感触がうっすらと残っている。
『よくぞヤン様と皇太子様を守ってくださいました。
ヤン様もヤン様に仕える高麗出身の私たちも、皆あなたに命を救われたのです』
ホン尚宮だけでなく、ヤンも皇太子も彼女に仕える者達も、
元にいる民なら、どこが出身だろうが守らなければならない存在に変わりはない。
叔父上…あなたの信念には民がいませんでした。
でもその民のことを一番に想っていたのは元の者ではなく高麗出身の者だったのです。
貢女に跪いた、と嘆かれた時にもう駄目だと悟った。
「権力が叔父上の信念を曇らせたのなら…
私たちはいずれ道を違える運命だったのかもしれません」
実の息子のように慈しんでくれた叔父上を、
守るべき一族を、私は自らの手で壊してしまった。
政を動かす力がありながらも、
民を思うことができなくなった叔父をみているのが辛かった。
耐えられなかった。
『もし私が権力に溺れ悪醜をさらしたら、そなたの手で殺してくれ』
ずいぶんと昔に託された遺言は果たされた―。
とうに心は決めていたが、後に残った心の枷はとても重く、しばらく外れそうにもない。
だが、あれだけ腫れていた目はもう痛くない。
痛くはないが、
気を抜くとまた涙がこみ上げてくる。
タルタルは天井を仰いで涙をこらえた。
まだやることがある。
このような顔で参内はできない。
身支度を済ませ、部屋を出ると、外でホンダンが待っていた。
立ち止まることなくタルタルはホンダンの前を通り過ぎた。
ホンダンも当然のようにタルタルの後ろをついて来る。
「陛下はヤン様に厳しい罰を下すかもしれぬ…」
「私も…今回ばかりはそうなるのではないかと心配しております」
タルタルとホンダンの予想は的中していた。
まさにその時、宮中ではタファンがヤンに席藁待罪を命じたのだった。
「そなたは早く宮殿に戻れ。誰か、ホン尚宮に馬を」
「タルタル様は?」
「私は用事がある、丞相の部屋に寄ってから向かう」
「わかりました。お気をつけて」
昨夜の弱々しさがまだ残っている様子だったが、
タルタルよりも今はヤンのことが心配だ。
タルタルに一礼し、家人が用意した馬に乗ると
ホンダンは宮殿へと駆け出した。
「ホン尚宮、そなたは私が命を救ったと言ったが…私はそなたに救われたようだ」
ホンダンの背中を見送りながらタルタルがつぶやく。
だが感謝の言葉は疾走するホンダンの耳に届くことはなかった――
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(5)へ続く
※次回で終わりです![]()