軍師と側室 「想いは月に照らされて」の続きです。

 
※この記事は韓ドラが好きすぎて、
ひたすら個人的に楽しむために書いた二次創作品です。ご了承くださいあせる



------------------------------------------------------------------------------
 
 

 

 

「戦場へ向かうは我が君と」
 
 
 
 
出立の日、いよいよ大都へ向かう馬車に乗り込もうと、
ペガンの養女、キ・ヤンが屋敷の門から現れる。

 
日の光のもと、純白の衣装に身を包んだヤンは
神々しくも畏怖めいた美しさがあった。
 
 
その姿を前に心が震えるのをタルタルは必死で堪えた。
 

 

あと少し、もう少し-

 

復讐の幕開けだ。
待っていろ、ヨンチョル

 

 

スンニャンと呼ばれていた過去はペガンの屋敷に置いてきた。

 
そして、一筋の涙に、最愛の人-高麗王を封じ込める。



 
優しく名を呼ぶ声も、力強く包み込む腕の感触も、もう二度と、私が望むことはない。
 

 

これからは、復讐という私の道を進む-

 

 

 

馬車が止まった。
 
「後悔せぬか?馬車を降りてひとたび宮中に足を踏み入れれば、
二度と引き返すことはできないぞ」

 
 
最後の説得だった。
 
 
「後悔は、いたしません」

 
しっかりと土を踏みしめたヤンの瞳は、
宮中の外壁を貫くような強さで前を見据えたまま。
 
 
それまで弟子としてヤンを扱ってきたタルタルは、
初めて彼女に跪き頭を垂れた。
 

 

「この先、長い戦いになります」

 
 
「覚悟しています」

 
 
歩み出したヤンの耳にかすかにタルタルの呟きが届いた。

 
 
「ご武運を、ヤン様」

 
 
戦場に赴く者への激励の言葉-。


 

 

-それが、これから側室の試験を受ける令嬢にかける言葉?

 

 

声には出さなかったが、タルタルの思わぬ冗談に
それまで張りつめていた緊張が和らいだせいか、ヤンは思わず口元を緩めた。

 
 
それはタルタルが初めて見た、ヤンの純粋な微笑み。

 

 

-願わくば、この方のお心が晴れる日と我が一族の繁栄がともにありますように-

 

 

ヤンの、おそらく最初で最後になるだろう、
邪心のない微笑みを目に焼きつける。

 

 

この先は戦場だ。
 
 
目標を達成しつつも生き残るのは、原野での戦よりはるかに難しい。
 

 

すべてを捨てて真っさらになった高麗の娘は再び唇を結び、
謀が渦巻く宮中へと歩み出した。

 
 
 
黒い鎧の軍師とともにー。
 
 
 
(了)