転院を終えて | 山あり谷あり、カーブあり

山あり谷あり、カーブあり

家でも仕事でも一緒に頑張ってきた夫と妻のブログ

昨日、なんとか転院を終えました。


その数日前までは、脱力感こそあるものの、自分の事は

なんとか自分でできていた夫ですが、一日過ぎる毎に、

歩くのもやっとになり、ベッドから起きるのにも介助が必要に

なり、全く歩けなくなり、ベッド上に座るのさえも辛くなり・・・・・・、

と、驚くべきスピードで、何も出来なくなってきてしまいました。


転院も、とんでもなく大変な作業となってしまいました。

昨日は半休を取って大学病院に行き、ベッドから

車椅子に移るだけでも、一苦労、車椅子から自家用車の

助手席に乗り換えるのは、さらなる一苦労。 介護士の方と

二人がかりで、全体重を乗せてくるしかない夫を、なんとか

助手席に座らせる事ができました。

なんとか国立癌センターまで辿り着き、手続きを終えて、

二人部屋に通されました。


すると、看護師の方から、「今日は個室が空いていませんでした

が、明日以降、空いたら移りますか?」

と尋ねられたので、頂いたパンフを見ると、個室料金は、一日

あたり4万円程度~10万数千円。 

3~4週間は入院すると予想していたので、個室に移ると

部屋代だけで少なくとも100万円前後、多ければ200~300

万円になってしまう計算になります。

夫に用意して頂いた部屋も、ナースステーションに近く、

別に不便もないので、「いえ、今のお部屋で満足です」

と答えると、夫の様子をちらりと見ながら、

「でも、今後、症状が進んできたらまた相談しましょうね」 

と告げられました。


そして、次には別の看護師さんから、介護保険を利用した自宅

でのターミナルケアに関しての説明を受けました。


新薬に望みを賭けて、頑張って必死に転院してきたのに、着いた

途端にターミナルケアの話か・・・・・。


と、だいぶ凹みましたが、もうすでに自分ではなにも出来なく

なってしまった夫の状態を見る限り、終末期と診断されるのも

無理ありません。

トイレにももう自分で行くのは無理だし、しびんを使おうにも

腰を持ち上げるだけでもクタクタになってしまうので、カテーテル

が通されました。

酸素量も落ちているので、酸素ボンベ使用も始まり、点滴も

つき、チューブだらけになってしまいました。

そんな状態でCT検査を受け、その後、主治医の先生から

「大学病院でERCP(胆管造影術)を行って、ステントを入れて

おられますが、血液データなどの数値や検査結果を見る限り

うまく胆汁の流れが確保されているようには思えないので、

もう一度、鼻から内視鏡を通して施術をやり直しましょう」

と言われてしまいました。


大学病院では、主治医とのミーティングの際、「ステントを留置

した結果、胆管内の胆汁の流れは回復できたけれど、黄疸が

進んでいるのは、肝臓の腫瘍の悪化のせい」 という説明を

受けていたので、ERCPがうまく機能しておらず、またやり直し

と言われたのは、とてもショックでした。 

ただでさえ、こんなに消耗しているのに、さらに身体に

ダメージがかかってしまうなんて、大丈夫なのだろうか・・と。


「鼻から再度、内視鏡を入れる」という主治医(←国立癌センターの)

のお話でしたが、そのすぐ後にいらした副担当医からは、

「やはり、腹部に穴を開けてチューブを通し、胆汁を排出することに

しましょう」

と言われました。

そして、合併症のリスクが書かれた同意書に、内心の不安を

感じながらもサインしようとしていた時、再び主治医が現れました。


「たびたび状況が二転三転して申し訳ないのですが」

と前置きしてから、

「やはり、今のご主人の身体に与える負担を考えると、ERCPは

無理です。チームで再度話し合った結果、中止にします。 

このままアレクチニブの解禁を待って、スタートしてみましょう。」

と言われました。



今日は、夕方に上がらせてもらい、さきほど病院に寄ると、

私の姿を見た夫が

「朝からずっと待っていたのにどうしたの?」 

と、不思議そうな顔をして尋ねました。

え・・・? と戸惑いながらも、

「早退するために、早朝から出勤して独りで仕事を片付けて

きたのよ。いつもよりもだいぶ早く来られたのよ?」

と説明すると、

「ああ、そうか・・・仕事なのか」

と頷いていました。 

それからも、なんとなくつじつまの合わない話ばかり

していました。

もしかして、モルヒネ系の痛みどめを入れているのかと思い

看護士さんに確認すると、

「いいえ、カロナールしか使っていません」

との事・・・。


夫を車椅子に乗せ、高層階の窓からレインボーブリッジの

夜景をじっと一緒に見て、「薬が効くといいね」 というような

話をして、再びベッドに夫を横たわらせ、眠りにつくのを

見届けて、帰ってきました。


きっと・・・・また目が覚めたら、私が居ないのに気づき

「どこへ行ってしまったんだろう?」

と思うのだろうか。

どうか・・・彼が、朝までぐっすりと眠ってくれますように。