連載小説ネトウヨ疝気 第2回 | 夏炉冬扇の長袖者の尉のブログ 

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 好事魔多し。俺様はこれをやるにあたっては十分に警戒して、同じ場所で2日続けてやらない、警官が来たら松葉杖を担いで募金箱を抱えて逃げることにしていたし、この姿は歌のコスチュームであり、特定の状態や自分の過去を表すものではない、募金は恵まれないストリートミュージシャン佐倉衣装への支援であって、特定の団体に行くものではない、との言い訳も用意していたが、相手が悪すぎた。

 

 俺様のストリートミュージシャンの営業を、在郷軍人会と国防婦人会が糾弾したのだ。県会議員を何人も抱える巨大組織であり、用意していた言い訳が通用する相手ではない。逮捕状が発行され、俺様は氏名手配の容疑者になってしまった。10日ほどは栃木県内を逃げ回っていたが、逃げ場がなくなり500万円を資金に県外逃亡を決意した。

 

 何処へ逃げるか、匿ってくれる知人がいるところが逃げ場になる。愛知県にはキミドリがいるが、あいつは1行しか自分の言葉が書けない極めつけの馬鹿である上に、アパートを追い出されて横町のドラム缶に住んでいるとの話も聞いており、頼って行って、ボクちゃんのおうちは屋根がないのやーねーなんてことになりそうだから、これは却下である。

 

 名古屋の大先生は頼って行けば断らないだろうが、清廉潔白で高潔な人柄なので、弁護士を付き添わせるから栃木県警に自首せよと言うに違いないから、これも逃亡先としては却下である。

 

 愛知の向うの岐阜には、肝胆相照らした大親友がいる、親友とまでは言えないが、県立高校の教員という知り人もいるから、俺様は岐阜に逃げることに決めた。

 

 名古屋までは新幹線でそこから在来線で岐阜に向かうが、県境の木曽川を渡るときに奇妙なものを見た。鉄筋コンクリート造りの3車線の橋が、川の半ばから木造の如何にも貧弱な1車線の橋になっているのだ。なんだあれはと不思議に思った。

 

 岐阜県に入るとビルがなくなり、藁葺き屋根の家が目立つようになって、天秤棒で肥桶を担いでいる人や、農耕馬を引いている人を見るようになり、自動車の数が激減して、稀に走っている自動車は煙を出していた。岐阜駅を降りると、都市なので藁葺き屋根はなくなり、一面にバラックが並んでいる景色があった。

 

 大親友を頼って逃げて来たものの、もしかしたら俺様は飛んでもないところに来てしまったのではないかという、もの凄く嫌な予感をもった。     

 

 明日に続きます。