連載小説ネトウヨ疝気 第3回 | 夏炉冬扇の長袖者の尉のブログ 

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 駅から出て、どうやって大親友に連絡を付けようかと、切株に腰かけて、持っていた「ほまれ」に百円ライターで火を付けて、ふかしながら思案していると、目の前に煙管が出て来た。

 

 「卒爾乍、火を一服お借り申し上げたい」

見ると、色が剥げて来ている木綿物の藍染めに、よれよれの袴を着け、羊羹色になった羽織を着た40歳ほど男が立っていた。

 

 俺様が煙草を差し出すと、その男は煙管に火を移して吸った。

 

 「他国から来られたか」

その男が訪ねて来た。

「どうして」

「そのなりを見れば分かる」

 

 そう言われて回りを見回すと、男は着物か国民服を着ており、女は着物かモンペで、俺様のような、革ジャンにジーンズといった姿の者はいなかった。

 

 「もしや、佐倉衣装殿ではござらぬか」

どうして俺様の名を知っているか分からなかったが、違うと嘘を言うのも嫌だったので黙って頷いた。

 

 「10日ほど前からブログの更新が途絶え、逃亡したとの噂があったので、かの者を頼って岐阜へ来られるのではないかと思っておったのだが」

瞬間あの大親友ではないかと思ったが、本人ならば、かの者というはずがない。

「あなたは」

「黒木でござる」

もう1人の知人の県立高校の教員氏であった。知り人と分かってほっとした俺様は、来る時に見た不思議な橋ことを聞いてみた。

 

 「変わった橋を見たのだが」

「あれでござるか、橋のかたちが変わるところが県境でござる。愛知は金があるから立派な物を造る、岐阜は金が無いので簡素な物になる。あれは幹線道路だから車線があるが、田舎だと岐阜側は丸太が架けてあるだけのところもある」

「それほどの違いがあるのか」

「岐阜県は、飛山濃水などと申しているが、飛騨は山ばかりでコメが取れず、美濃は連年の洪水で、人は水屋を造り、軒に舟を吊って暮らしている」

 

 「連年の洪水とは、堤防はないのか」

「あることはあるが、愛知側よりも岐阜側は1尺低いので、水はこちらへ来る」

「嵩上げすれば」

「こちらが県民に夫役をかけて畚で土を運んでやっとの思いで1尺上げれば、向こうは重機を大量に入れ、コンクリートを止めどもなく投入して、短時間で2尺上げて来るからどうにもならんのだ」

 黒木は威張って説明するが、どういう貧乏さかと、俺様は呆れた。

 

明日に続きます。