文房具屋を営む母の応援

 

私の父は現役会社員のとき、はっきり言えば給料が低くて貧乏でした。でも子どもはどんどん食べる量が増えていきますし、教育費の問題も次第に出てきたので家計の足しにと母は店舗付き住宅に引っ越して文房具屋を営むことにしました。そんな背景も幼い私には無関係で、あたかも母がお店に取られたような気がしてしまい、いつも寂しい思いをしていました。

 

高校生になった私はアメリカの大学へ進学することを決めた時から毎日夜遅くまで猛勉強。そして勉強をするために使っていたのは、100円程度のよくある普通のボールペン。でもなんだかちょっと重さが足らず、重心が悪くて手に合っておらず、書きにくいなあと思っていました。もっと書きやすいボールペンがあったらいいのになあ…と心でぼやくも解消されない問題だと決めつけていました。

 

そんな多忙な私が母のお店に顔を出すことはほとんどなくなりましたが、あまりお店のことが好きでなかった私にはかえって好都合でした。それでもたまたま勉強の合間に店にいる母の顔を見に行った時、母が新品のrenomaのボールペンを「これ使う?」と私に手渡しました。母のお店の客層からすれば、そんなブランドもののボールペンは仕入れをするわけもありません。きっと勉強を頑張る私のために一生懸命働きながら、わざわざ仕入れてくれたんだと思います。

 

世の中に数千円以上するボールペンがあることなどつゆ知らず、初めて見た時は驚きました。「renoma」っていう言葉も初めてその時に聞きました。そして母はきっと勉強を頑張っていた私をそんな形で応援してくれていたのだと思います。

 

そのボールペンは重さがちょうど良く、手にもなじみが良くて毎日使い続けました。そのうち塗装が剥がれて情けない恰好に…。そして同じものを2代目として、プラス違うデザインのものをもう1本、また母に買ってもらいました。

 

その後めでたくアメリカに進学することになりましたが、renomaのボールペンは替えインクを調達する術がないだろうと想像したので、家に置いて出発しました。そしてあれよあれよと数十年が経過しましたが、そのボールペンがなんと先日出てきました。懐かしいなあ…。高校生のときに頑張ったこと、辛かったこと、楽しかったことが色々と思い出されます。そして、もう一度使おうと決めたのです。

 

 

心配なのがインク…出るかなあ?と試し書きをすると、もちろん出ない…。古いもんなあ、そりゃあそうだ。ぬるま湯にペン先をつけてしばらく置いてみたけど、やっぱり出ない。これは替えインクを買わなくちゃ。

 

元々入っていた替えインクはぺんてるのものでメーカーさんに問い合わせてみましたが、もう廃版になっていて、後継品も代替品も製造していないとのこと。ああもうだめかなあ、と諦めようかと思ったけど諦めきれない。他のメーカーでなんとかならないのかな、と思って参考にしたのがこのサイト↓

 

 

これによると、ぺんてるのBFL5 という品番はOhtoのC-305と互換性があるらしく、Ohto に確認してみると、仕様は国際規格ISO14145に準拠しているので形状は同じだけど、メーカーとしてはrenoma本体との検証をしていないので保証はできないとのこと。それでもまあしばらく使えればいいや。早速ヨドバシドットコムに注文!

 

右が廃版のインク、左が今回注文したものです。

 

さすがヨドバシドットコムさん、めちゃくちゃ仕事が速い。翌日にはポストに入っていました。ありがとうございます。首を長くして待っていたので、早速開けてペンに入れてみました。そしたら

 

サイズがピッタリ!

書ける!

 

やったああ!

もう嬉しくて嬉しくて笑い泣きラブラブOhtoさん、ありがとうございます!

 

母の形見の腕時計が再び動き出したとき↓もそうでしたが、こうやって昔の思い出が詰まっているものが復活するとなんとも言えない喜びがこみ上げてきます。高校生の私に再び会えたような気がして、あの時頑張ったから今の私があるよ、ありがとうという気持ちになりました。

 

 

親孝行したいときに親は居ないものです。この年になってようやくその意味が分かった気がします。母の応援に感謝しつつ、今後も大切に使っていこうと思います。

 

 

 

 

 

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