きのうの本ブログで、トランプ大統領の「戦争観」に対する見方を変えるべき理由として挙げた2つの理由、すなわち米国財政負担の軽減と米国経済に多大な恩恵、について、以下で具体的にご紹介しよう――。
1、米国の戦費(財政負担)が軽減
2019会計年度(2018年10月―2019年9月)の財政赤字は26%拡大して9840億ドル(1ドル109円で換算すると1兆7256億円)となり、2012年度以来の高水準となった。歳出が8.2%増と2009年以来最大の伸びになったことが原因。軍事支出をはじめヘルスケア、教育関連の支出が増えた。
米財務省が2019年11月1日に発表した同10月末の米国債務残高(財政赤字残高)は、トランプ政権下で急膨張したことにより23兆84億1000万ドル(同約2598兆6690億円)にも上った。17年の大規模減税や国防費、メキシコ国境の壁建設などで支出を増やしてきた。
財政が悪化すれば、景気悪化のときに財政出動の余力が減少するばかりか、長期金利の上昇(国債価格の低下)により政府の利払い負担が増加したり、企業経営に甚大な悪影響を及ぼすリスクがある。
トランプのポチ・安倍晋三の日本と文在寅の韓国から、従来の米国製武器購入だけでなく文字通りの「戦費」を日韓など同盟国から徴収することがいかに重要な意味を持つか、お分かりだろう。
2、米軍需産業の支援+米軍武器の在庫一掃+米雇用創出
英国の国際戦略研究所(IISS)がまとめた世界の軍需産業売上ランキングをみると、トップはロッキードマーティン(米国)で40.5憶ドル(同約4414億円)、2位がボーイング(米国)で29.5憶ドル(同約3215億円)、3位はレイセオン(米国)で22.9憶ドル(同約2496億円)と、上位3社を米国勢が占めており、3社の合計金額だけでも年1兆125億円と1兆円を超える。
日本、韓国をはじめとした同盟国への米国製武器の押し売りには自ずと限界がある。やはり米軍需産業を潤すのは戦争による特需となる。
軍需が好景気となれば、雇用にも好影響を及ぼす。米国は現状、完全失業率といわれるなかでも、軍需産業の雇用創出となればラストベルトの支持層にとっては処遇改善につながる可能性が高い。
さらに、米軍にとっては古くなった武器を在庫一掃できるというメリットがある。タックスペイヤーの意見が強い米国では古くなったからといって簡単に捨てるわけにはいかない。税金を有効に使うためには、何かに“使う”ことが求められる。戦争での一掃は、まったくもって好都合な理由になる。陳腐化した武器を在庫一掃できれば、新品かつ最先端の武器を購入できるというわけだ。
3、原油高により産油国は歓迎、米国産原油への需要が高まる
ホルムズ海峡やペルシャ湾で武力衝突が起こるなど、米イラン間の軍事的緊張が高まれば、原油先物相場は急騰するだろう。これは、ここ数年、原油安で財政難に喘いできた産油国にとっては天の恵みに等しい。特に財政が厳しいサウジアラビアやロシアが密かにだが、歓迎しないわけがない。原油高は産油国の利益=財政再建に寄与することを忘れてはならない。
今や、サウジとロシアを抜いて世界最大の産油国となった米国が享受する恩恵が大きい。武力衝突によって中東産原油の輸出が滞れば、原油輸入国は調達先を分散する必要に迫られる。その時、真っ先に選択されるのは米国産原油=シェールオイルだろう。
米国エネルギー省は、2019年1月時点で日量1200万バレル余りだった米国産原油は、今年12月には1335万バレルに達すると予想し、さらに伸びていく見込み。その太宗を占めるシェールオイルの損益分岐点は現状の原油相場(1バレル=50~60ドル)でも採算が合うまでになっているが、中東危機で高騰すれば利益率は飛び上がるのは間違にない。
米国は欧州向け輸出を先行させてきたが、パナマ運河を拡張するなどシェールオイルをアジア・太平洋諸国に輸出する体制を着々と整えてきた。日本も中東産と比べて割高感のある米国産を敬遠してきたが、中東危機となれば話は別だ。安定供給と価格との兼ね合いで米国産にシフトしていくだろう。
米イラン間の軍事的緊張による原油高は、いよいよ本格的な出番を米国産原油に進呈する。そして、原油輸出拡大⇒貿易収支改善⇒財政収支改善にもつながるという“好循環”が生まれるのだ。
4、トランプ大統領の再選に貢献する
こうして、米イラン危機から生じるさまざまな変化・動きは悉くトランプ大統領に有利に働くのである。11月の大統領選挙までに“開戦”して、米国の有権者、特に支持者にアピールする誘惑に駆られても何ら不思議ではあるまい。