アベノミクスの主柱である、黒田日銀による異次元の金融緩和でメガバンクにジャブジャブに供給された巨額のマネーは、一体、どこに向かったのだろうか?
第1は相続税対策絡みの不動産融資、第2に銀行のカードローン、第3に海外の融資が伸びている。とりわけタックスヘイブン、オフショア向けが伸びており、「特にケイマン諸島への融資額が急増している」と、3月30日の参議院・財政金融委員会で、日本共産党の大門実紀史氏(だいもん・みきし)が明かした。
2014年に約63兆円だったが、直近のデータでは昨年末で約6280億ドル(70兆円超)の巨額の融資残高となっている。日本の銀行がタックスヘイブンのケイマンにこれだけの融資をしていることに課税当局としてどう見ているのだろうか?
大塚拓・財務副大臣は、次のように答弁している。
「これは財務省として大変関心をもって注視しているところです。合わせて政府税調、与党税調でも関心をもって見ていて、昨年の政府税調あるいは平成29年度与党税制改正大綱でもグローバル経済、日本経済の構造的変化としてオフショア・センターへの資本蓄積および日本からの証券投資残高においてケイマン諸島が米国に次ぐ2番手に急伸しているという事実がある。」
こうしたことが指摘されてるなかで、「財務省としても多国籍企業の国際的な租税回避に適切に対応するうえで、こうした実態を、しっかりまず把握していかなければならない」とした。そこで、財務省は「多国籍企業情報の報告制度」を導入した。
さらに裏を取るため、海外の金融機関を利用した脱税にも対処するためにも海外の情報を取得しなければいけない。国際基準にもとづいて、居住者に関わる金融口座情報を、ケイマン諸島を含んで100か国・地域で自動的に交換する制度を平成27年度に導入した。こうして状況の流れも掴んでいき、「何かあったらしっかり塞いでいくなど、今後も取り組んでいく必要がある」と、大塚・副大臣は語った。
その一方で、租税回避であるものとそうでないものとの峻別も難しいところがあるので、実態をしっかり把握して、「適正でないものを押さえていく」という。
大門氏は、「メガバンクがケイマン諸島を拠点とするヘッジファンドと連携を強めている」と語った。日本のメガバンクがケイマンのファンドに融資するのは、ファンドの運用資金を何倍かにする=レバレッジを効かせて利幅を拡大するのが目的だとした。この融資がタックスヘイブンに貸し付けられて、投機マネーとして循環して為替などの乱高下を拡大させている、と指摘した。
欧州では、投機的な金融取引とか投機に関する課税制度が導入されている。英国、フランス、ドイツが導入している、いわゆる「銀行税」である。
財務省の星野主税局長は、「(銀行税は)欧州主要国(英独仏)に2008年にこの制度が導入されている。リーマンショックを契機として国際的な金融危機に伴うコスト負担等に関する議論が提議されるなかで、そのための方策としていわゆる銀行税が導入されたものと認識している」と、答弁した。