外壁修繕工事、いつの話だ。ティーパーティーの時から、ずっと引っかかっている。南辺会計担当理事がどこかぎこちなく感じるのは、ただの勘違いではない。会計報告を聞きながら、蕨は南辺の言葉一つ一つに集中していた。
 

彼は報告を淡々と続けるが、その表情の裏にあるものを見逃してはいけない。確かに資料は整っている。だが、あまりに整いすぎている。それが逆に不自然だ。どこかで彼の言葉のほころびが見えるはずだと思った。
蕨一太の発言は独り言のように始まった。

 

「南辺さん、その修繕工事って具体的にいつ行われたんですか」
 

南辺の顔が一瞬固まった。やはり、何か隠している。だが、彼はすぐに冷静を装い、当たり前のように返事をしてきた。
 

「ええ、今月初めに業者と契約して修繕を行いました。大掛かりなものではないので、住民に影響を与えることはありませんでした」
 

その言葉に蕨は違和感を感じた。外壁の修繕が行われたなら、少なくとも工事の気配くらいは感じ取れるはずだ。足場も何も組まれていなかったのに、どうしてそんなに費用がかかるのか。さらに問いを続ける。
 

「でも、大掛かりな足場が組まれていないのに、どうしてそんなに費用がかかるんでしょうか。住民たちも、特に工事の存在に気づいていないようですが」
 

この瞬間、南辺の中で全てが真っ白になった。蕨の指摘が準備していたシナリオを一気に崩していくのがわかる。だが、ここで動揺を見せればすべてが終わる。南辺は必死に冷静を装いながら言い訳を紡いだ。
 

「それは部分的な修繕だったので…目立つ工事ではありませんでした。費用は必要最低限で済んでいますが、安全性を確保するためにはどうしても必要でした」
 

南辺は自分の発言ながらどこか言い訳じみた説明だと感じた。蕨の視線は鋭くまるで心の中を見透かしているようだ。茂原理事長が間に入ることで、会議は一旦収まったが蕨の存在が脅威に感じて仕方なかった。


「こいつ、まだ何かを仕掛けてくる」