SPECTRAL DMC-12 | COOLAUDIO

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SPECTRAL DMC-12



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プリアンプは20年近くGOLDMUND MIMESIS 7NP(以下MM7)を使ってきました。
ボリュームの扱いづらさとリモコンがない事が不便なくらいで音色や表現は唯一無二の存在でした。 これまでに機会を得ては色んなアンプを自宅で試聴してきましたが、どれも決め手に欠け何度も繋ぎ換えて比較試聴しても結局手元に残るのは7NPでした。



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表現の仕方が似ているとの事でGOLDMUNDユーザーがSPECTRALに乗り換えるのは珍しくありません。 SPECTRALの機器は他のメーカーから比べると流通も少なくおのずと情報も減ります。 メーカーポリシーも商売っ気が全くなく扱える店舗の査定基準も敷居が高くオークション以外ではあまり見かける事がありません。 関西ではアサヒステレオセンターが取り扱っていて、ここはとてもいい店なんですが購入意思がないと申し訳なくて最近はあまり行っていません。 オーディオショーなどで見かけることもなく雑誌のインプレで想像するしかない状況です。



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雑誌からの印象ではGOLDMUNDに近似するクリアーで空間表現に優れる音でポテンシャルの高さはあるものの高周波特性の悪い他のメーカーの機器と接続すると発振したりするとの事で相性に気遣う必要があります。 あまり万人向けと言えるタイプではなく、これは初期のGOLDMUNDでも同じですが…。 そんなに変わらないのであればGOLDMUNDで良いしこれまではあえて試聴する機器に選びませんでしたが、ショップの人と色々話しているうちに一度試してみたらと言われその機会を得ました。



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前置きが長くなりました。
今回、選んだのはDMC-12で受けるパワーアンプはMIMESIS 8.2です。
同義なこと言っていたり相反する事を書いているかもしれませんし、聞いたそのまま纏めるのも面倒なので箇条書きのままにしました。
結果から言いますと通電直後と経過時間により音が随分変わります。


①接続通電直後
ソリッドで骨太。
中低音が芯のある際立って硬質感のあるカツンカツンとした耳が痛くなる音。
全ての音が立ちすぎていて微細な音もきわめて分析的によく聞き取れる。 
撥音が顕著。曲中でアクセントの付く部分はクローズアップされボリュームを下げても明瞭。
空間定位は良好明晰、音場は小さい。
パワーアンプを変えたかのような低音量が増し力強さがある。
さらにボリュームを上げると拡がらずに叩き付けるような屈強な音に。  
柔らかさの無い高域はさほど伸びてなく、十分だがスカーと気持ちのいい伸びや響きではない。  
音の立ち上がりはMM7より早く音像はスピーカーの後ろではなくライン上から前。
クリックのあるボリュームは後半分の位置がほしいところ。


②通電20時間
きつさが弱くなり聞きやすくなっている。
長期間通電されていなかったためか変化量が非常に大きい。


③通電3日
初期のカツンとしたイメージは弱くなり音に軟らかさが出てきた。
全体的に不自然なところは無くなり聞き疲れする事もなくなった。
それでも骨太感はあり、しっかりとエッジは立っていてその実体・実像感は独特のもの。
ここら辺はMM7の気配感を軽く凌駕していてリアルさは非常に魅力的。
細部の表現も減っておらず表現の巧さに舌を巻く。
音場はGOLDMUNDから比べると狭くなる。
ボリュームを上げると音像が大きくなる。


DMC-12の残留ノイズはMM7同等か多目。 
(この残留ノイズはギリギリまで微細な音や空間ノイズを拾おうとするがゆえと解釈しています。) 
これを聞くとMM7が柔らかくやさしく聞こえる。
中低音の少ないMM7の方がボーカル音像が小さい
また、その振る舞いも音像をカッチリ立たせるDMC12に対し
ふわっと浮かび上がらせるMM7と表現はまるで違う。


どんなCDでも上のような表現をする訳ではないですが…。
MM7は長期間の使用で数度のメンテナンスを経ても相変わらず魅力を感じますが
それ以上に曖昧な表現が減ることでボーカルが際立ち音楽に引きこまれるのが嬉しい。
MIMESIS 27以降のGOLDMUNDの機器は音の傾向が軟らかくなり元々音場型ではあるけれども
さらにその方向が強くなり響きも多くなっている。

最新のGOLDMUNDは違うのかもしれないがショップでの話からも自分が欲するものとは少し方向性を異にすることは確か。
今回、見通しのよさをとってメインシステムのプリアンプをDMC12に変更する事にしました。
気になることがひとつ。
輸入元のナイコムがSPECTRALの取り扱いを止めてしまった事。
どうやら技術的に要件を満たしていないためにSPECTRAL側から切られたようです。


電子機器は使わずに手元に置いておくのは確実に劣化しますから、いざ使用してみるとガリやノイズなど不具合が出るかもしれません。 そうなると使用する気も萎えてしまいます。 修理費用がかさんだり思い切って売却しようとしてもその時点ではリセールバリューも下がっていると愛着がある程不憫でとても悲しくなってしまいます。 まめな方ならば常時通電しておいたり定期的に繋いで音を出してやったりされるでしょうが、面倒くさがりな私には無理です。 また、それでなくても狭い部屋に数セットのスピーカーとシステムがありスペースや電源事情、なによりも金銭面で実際には幸か不幸か手放さざるを得ないです。