始動性が悪いという平成5年式フェアレディZ(CZ32,VG30DETT)
特に冷機時と、エンジンを止めて10~30分くらいの間が悪いという。
また、始動後も、時々エンジンが震えることもあるという。
同業者からの依頼である。
VG系のエンジンは作業性が悪く、また、各端子の錆が多く発生しその点検をするためにコネクタを外すとコネクタが割れたり、コネクタのロックピンの脱着が面倒だったりと、今となってはあまり関わりたくないエンジンである。
問診の結果、アクセルペダルを踏んだ方がかかりやすいということと、また、始動後は排気ガスが臭いということなので、空燃比が濃すぎることによる始動不良と思われた。
可能性としては、燃圧の高過ぎ、インジェクタからの燃料漏れ、プレッシャーレギュレータからの燃料吸い、水温センサーの特性ズレや端子の錆の発生が考えられる。
簡単に点検しやすいプレッシャーレギュレータから点検することにした。
エンジンに向かって左側にプレッシャーレギュレータらしきものがあったので、バキュームホースを外してみた。
外した瞬間、何かの液体が出てきた。
臭いをかぐと明らかにガソリン。
点検時間1分で原因究明。(^-^;
エンジンをかけたままにすると、ガソリンが吹き出した。
(常に出ているわけではありません。温度によるものかどうかわかりませんが、エンジン始動後でも出ない時もあります)
プレッシャーレギュレータのダイアフラムを点検すると、負圧が保てなかった。(この時にガソリンを吸い出すこともあります。大量に吸いだすとゲージが壊れる可能性がありますのでご注意)
ダイアフラムが破れている。
プレッシャーレギュレータの不良である。
ただ、このVG30DETTのプレッシャーレギュレータは2個あったような記憶がある。
もう15年以上前の事例で正確には覚えていないが、なんで2個も必要なのかと不思議に思い調べたので、かすかな記憶が残っている。
エンジンルーム内の燃料配管を燃料フィルタからたどっていくと、おかしなことに気が付いた。
不良だったプレッシャーレギュレータは燃料フィルタに直接つながっているのである。
通常、プレッシャーレギュレータは、インジェクタが付いているデリバリパイプのリターン側にあるはずである。それが入り口側にあって圧力の調整なんて聞いたことがない。
燃料配管をさらに調べると、エンジンルーム右側にもう一つのプレッシャーレギュレータらしきものがあった。
やはり2個付いていたのである。
こちら側も点検したが、ダイアフラムは破れていなかった。
燃料システムがどうなっているのかを資料で調べると、入り口側にあった不良のプレッシャーレギュレータは、実際には脈動を吸収するフューエルダンパで、右側にあるのが実際のプレッシャーレギュレータだった。
一般的に、フューエルダンパにはバキュームホースは接続していないのに、このエンジンはバキュームホースがつながっていたので、すっかりプレッシャーレギュレータと思ってしまった。
インマニ負圧で燃圧の脈動を吸収できるの?
フューエルダンパのバキュームホースを外してエアを吸わないようにメクラ蓋をし、フューエルダンパからも燃料が出ない状態でクランキングすると、冷機時、暖機後、エンジンを止めた数分後の始動性は正常になった。
暖機後の排気ガスを測定すると、COが0.8%、HCが300ppmと若干だが高い。
入庫時の排ガスは測定していないが、排気ガスは臭いしマフラの先端もススだらけと、明らかにオーバーリッチ。
O2センサを調べると、左右バンクとも反応が鈍い。
エンジン回転をかなり上げて暖機させると、左バンクはまともにフィードバックを開始したが、右バンクは0.2V~0.5Vくらいでしか変化していなかった。
車検には合格するとは思われるが、出来ればO2センサも交換するように説明し車を納めた。