運動中に喉の渇きを感じてから飲むという水分補給の仕方では脱水状態に陥りやすく、パフォーマンスが低下する可能性があることが、米アーカンソー大学水分補給科学研究所所長のStavros Kavouras氏らによる研究から明らかになった。
7人の男性自転車競技選手を対象としたこの研究では、喉は渇いていなくても胃の中の水分量が不十分な場合、スピードや出力(ペダルをこぐ力)が低下することが分かったという。
詳細は「Medicine and Science in Sports and Exercise」オンライン版に掲載された。
この研究では、7人の自転車競技選手に高温で乾燥した環境下(気温35度、湿度30%)で2時間、エルゴメーターのペダルをこいでもらった。
その際、盲検下で流れた汗と同量の水を経鼻胃管により直接胃に補給するか(非脱水群)、脱水状態をもたらす不十分な量の水を補給した(脱水群)。また、自然な喉の渇きを抑えるために両群ともに25mL(ティースプーンで約5杯分に相当)の水を5分ごとに飲んでもらった。さらに、運動のペースが一定に保たれる状態となって2時間後、全ての選手に全速力で5kmの走破時間を競ってもらった。
その結果、両群ともに喉の渇きは感じなかったにもかかわらず、脱水群では非脱水群と比べてペダルをこぐスピードや出力が低下していた。また、深部体温も脱水群では非脱水群と比べて高かった。
この結果について、Kavouras氏は「運動中に十分な量の水を飲み、適切な水分量を維持することが、最良のパフォーマンスと深部体温の調節に不可欠であることが示された」と説明する。また、運動時の発汗率には個人差があるため、ベストのパフォーマンスを達成するためには、個々のアスリートに適した水分補給の方法を決める必要があることを同大学のプレスリリースで示している。
なお、Kavouras氏によると、これまで一部の研究者の間では脱水状態ではなく喉の渇きそのものが運動時のパフォーマンス低下の主な要因だと考えられていたという。「これは、喉が渇くと惨めな気持ちになり、やる気が失われてしまう、という考え方だ」と同氏は説明する。
また、もう一つの要因として「脱水状態は身体に悪い」という認識がパフォーマンスの低下をもたらしているのではないかとも考えられてきた。これは、自分が脱水状態にあることが分かっていると、パフォーマンスを低下させてしまうのではないかという考え方だ。このため、これらの要因による影響を取り除けるような形で今回の研究が実施されたという。
なお、今回の研究は7人を対象とした小規模なものであったが、Kavouras氏は「有意差を検出するための統計学的な検出力は十分だった」と説明している。
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