続・「好況よし、不況なお良し」の本当の意味~日に新た | それもまた良し

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関西のとあるベンチャーで働くSEのブログ。

日々のインプットから、アウトプットを定期的に行うことが目標です。主に組織論やドラッカーの話題が中心ですが、タイトルにもあるように「松下幸之助氏」のような互助の精神を持ち、社会人として成長出来る事が最大の目標です。

日曜日です。
何にも縛られず、24時間、自分な好きなことに投資出来る1日です。


さて、以前、「好況よし、不況なお良し」の本当の意味というタイトルでブログを書きました。
それ以降、「好況よし」「不況良し」というキーワードで検索して、僕のブログを読んで下さる方が多いように思えて、大変有難いなぁ……と思うのですが、果たして、あれで真意が伝わっているのか不安な面も多々ありますので、今回、再度機会を設けて、再考したいと思います。



そもそも、松下幸之助氏は「好況よし、不況なお良し」という言葉をどういう意味で語ったのか? ということですが、ロジックは以下の通りです。

(1)産業は本来、好況も不況も関係無いはずだ
(2)なぜなら産業人の使命として、真にお客様の欲する物を製造するからだ
(3)したがって景気が好かろうが悪かろうが、商品の値段が5万でもお客様がその商品を欲すれば、それは売れる
(4)しかし好景気であれば、5万円の商品を利益割れの4万、3万で割る業者があるかもしれない
(5)しかし不景気であれば、値引くどころか、そういった業者は吹き飛んでしまう
(6)つまり好況であれば商品は売れて良し、そして不況であれば市場が適正化されてなお良し

恐らく、これ以上でも無ければ、これ以下でも無いと思います。



鍵になるのは、以下の点では無いでしょうか。

「真にお客様の欲する物を製造することこそ、産業人としての使命」
「好景気では闊達で、不景気では萎れた企業を相手にしてはいけない」

松下幸之助氏は究極的にドラスティックだったと言われていますが、こういう冷めた視点が、松下幸之助の「氷」の部分だったのではないかな、と思います。


最も、ロジックとして「これは明らかにおかしい!」という点は見受けられません。



企業は物を創り、お客様にそれを売る。売る際は少しの利益が出るような金額にする。
松下幸之助氏が言いたかったのは、お客様に買って欲しいがために、金額を下げる、利益率を圧縮するというのは本末転倒で、お客様に少しでも喜んでいただける商品を製造すること、ニーズを掴むことこそ使命だ―そう言いたかったのではないでしょうか。

そういう点で、ダイエーの中内氏と、膝を交えながら話しても折り合わなかった理由がよく解ります。
それぞれに哲学があって、どちらが良いとは言えないでしょうが、少なくとも「適正価格」と「安売り哲学」では交わりませんよねぇ。



ただ、これだけでは解けない問題が1つだけあります。

上記のロジックだと、1週間、1か月という期間だけを見てとれば、確かに筋は通ります。
しかし5年、10年という長いスパンで見れば、間違いなくお客様=消費者の欲する商品というのは移り変わります。

マズローの欲求ではないですが、人間の欲望は果てしなく、もっともっととせがむのが人間の本質です。
しかし松下幸之助氏の考え方だと、消費者の欲する商品がより高機能になった場合のキャッチアップがなかなか難しいと思うのです。

つまり、少なくともこのやり方だと消費者の変化に気付けない。
変化に気付けるのは、変化した後だと思うのです。


つまり、10人の人間がいて、10人中10人が「aが欲しい」と言ったとします。
じゃあ「a」を作りましょう、となって暫くして徐々に「やっぱりbが良い」と市場が変わったとしても、中には「aが欲しいなぁ」と言い続けている人がいてます。
松下氏の考え方の場合、お客様の欲する製品を製造することには着目していたとしても、ニーズの変更に適応していくことにはあまり頓着しているようには見えなかったので、結局10人中10人が「やっぱりbが良い」と市場が完全に変わった瞬間に「よっしゃbやな」と、次にbを製造する―そんな「真似した電器」の臭いがします。

ソニーの場合は、松下電器が「a」を創っている最中に「b」を製造し、お客様に披露して「うわーすげー、やっぱりbが良い」と言わせるのは上手いと思います。もっとも、ソニーはそれだけと言われれば、それだけなんでしょうが。



この泥沼思考というか、ある意味で「地方の家電製造会社」に留まりかねない思想を断ち切る魔法の言葉が、

「日に新た」

です。
今で言うところの「イノベーション」に当たるのではないでしょうか。

1日1日が新しい、1日1日が脱皮である、と。
昨日の考えは、今日古い。今日の考えこそ、新しい。


この考えこそ、上記のような「aを製造し続ける」という泥沼にはまる前に、「b」を製造出来る、つまり切り替えることが出来る、魔法の言葉だと僕は思います。



好況よし、不況なお良し。
これも恐らく、同様です。

不況がチャンスなのではなく、日常365日24時間ずっとチャンスなのです。
失敗したとしても、日に新た。
成功していたとしても、日に新た。

変化し続け、お客様と共に成長し続ける、日に新た。
そして常にキャッチアップしていれば、不況もなお良し、と言える余裕が出てきます。



自分自身に置き換えてみれば、不況を言い訳に製品が売れないことを正当化することを一旦止めることです。
どうせ売れない、の「どうせ」を、「なぜ」に変えて考える。

日に新た。

何をやっても売れない、の「やっても売れない」を、「やったら売れる」に変えて考える。

日に新た。