コードバンとは?
〜「革のダイヤモンド」コードバンの魅力に迫る〜
皆さん、こんにちは。
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僕は服飾業界に身を置く33歳です。
この業界でのキャリアは、今年で節目の10年に到達しました。
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前回から書き始めた「アメリカン・トラディショナルとは何か?」の合間に「豆知識・お役立ち」記事をひとつ。
今回は、このブログ内の靴の記事の中でも度々出てくる素材、「コードバン」についてです。
「よく聞くけど、どんな素材かイマイチよくわからない」という人、必見です。
コードバンとは?
「コードバン」とは、簡単に言うと農耕馬の臀部(お尻部分)の革のことです。
一頭の農耕馬から本当にわずかしか採れない、希少性が極めて高い革です。
さらに、
コードバンとは、牛革や豚革のような革の表層面ではなく、表革と裏革に挟まれた、中間層を丁寧に削りとったものです。
下の図は、馬の皮を魚の開きの様な状態にして上から見た状態です。(なんとも残酷ですが…)
これを見ると、馬革の各部位の名称が細かく記されています。
コードバンはこの中の「SHELL層(シェル層)」からわずかしか取れません。
シェル層は、「層」という言葉からも分かる通り、表革と裏革の中間に挟まれたコラーゲン質の繊維層のことです。
コラーゲン繊維が高密度に凝縮し、縦にきれいに整列している層であるため、非常に滑らかでしっとりとした質感であるのが特徴です。
シェル層がある部分の形が円形で、それが貝殻や甲羅を連想させることから、「SHELL」の名が付きました。
コードバン素材自体が「SHELL CORDOVAN」と表記される理由も、この「SHELL層」が由来しています。
また、円形で並んで2箇所に存在することから、「メガネ」という愛称でも知られています。
そして、このシェル層の厚みはおよそ2mm程度しかありません。
この2mmに満たない繊細な層を慎重に丁寧に表革と裏革から切り離す作業が、まるで宝石の発掘のような緻密な工程であること、そして「磨くと美しい光沢を放つ」ことから、コードバンは「革のダイヤモンド」と呼ばれ、最高級の革素材としてその名を世界中に知られています。
コードバンの特徴
このコードバンという革は、まさしく〝一生モノ〟の革です。
これだけはほとんど唯一無二ではないでしょうか。代用できる革が今の所見当たりません。
僕がコードバンをここまで絶賛する理由は2つ。
とにかく頑丈であることと、他の追随を許さない美しい光沢です。
⒈とにかく頑丈である
コードバンの強度は、牛革や豚革などの他の皮革繊維と比べてすば抜けています。
繊維の密度がかなり高い為、引き裂き強度が強く、最低限の手入れをしていれば割れることはまずありません。
その耐久性は、牛革の2〜3倍とも言われるほどです。
ご存知の方も多いと思いますが、その昔、日本のランドセルの素材はこのコードバンでした。
ランドセルというと、晴れの日も雨の日も毎日小学生が学校に背負っていくものです。
小学生がメンテナンスをするはずもなく、時には放り投げられたりして、6年間常に過酷な環境にさらされ続けるものですよね。
こういった事実を加味すると、コードバンがいかに耐久性に優れているかが理解しやすいのではないでしょうか。
歴史的に見ても、ミリタリー・シューズの素材として軍に支給されていましたし、現在でも一般的に革靴や財布など、比較的過酷な環境にさらされるものに使用される傾向があります。
美しい光沢
そしてなんといってもコードバン最大の特徴は、他の追随を許さない「美しい光沢」です。
コードバンを手にした人は十中八九、この光沢に魅了されます。
しかし、
この光沢は「徐々に出てくるもの」であって、コードバンは最初から光っているわけではありません。
ここは勘違いしてはいけません。
ダイヤモンドの原石も、最初はただの石です。
磨く事で美しく光りだすのです。
コードバンも1年〜2年手入れしながら履き込んで、表面に染み込ませたオイルが浸透してきた時に、コードバン特有の独特の「底光り」が出てきます。
ここまでくると、あとは軽くブラッシングをするだけでも簡単に美しい光沢が持続していきます。
【Brooks BrothersのALDEN製シューズ】
一度コードバンの光沢に魅了されると、もう抜け出せません。
言うまでもなく、僕もそのうちのひとりです。
【まとめ】
コードバンとは?
1.農耕馬のお尻の革のこと。
2.革の表面ではなく、表革と裏革の間の「SHELL層」という繊維層のこと。
3.耐久性にとにかく優れた素材である。
4.日本では、かつてランドセルの素材として使われていた。
5.使い込むにつれて、美しい光沢を放つ。