晩春と愁ひ初夏と心浮き立つ春は曙と古人の至言あり晩春と愁ひ初夏と心浮き立つはひとの情定かならざるをあらはす野をみれば松の花いまを盛り天を衝き八重桜ひと見るは絶へしども己の生を讚するごとく爛漫と咲くはあはれなり蘆角ぶき嗚呼緑色とはこれなりと膝打たするもまた妙ならむひとは老ひに真直ぐに向かひ草木は巡る季節にその生を新たにするはこれ天の配慮か置き所無き我が身にも石鹸玉朝雉子厳かにただ一声を残る鴨いつもの葭を踏みつけて濠放つ父の遺せし錦鯉手を叩けども二度と還らず