マンツーマン
「八ヶ岳まで行ってくれんか」
お弁当をもしゃもしゃ食べてた昼下がり
唐突な依頼が社長より舞い降りた。
僕は「八ヶ岳・・・何県やったかな?」と
無知っぷりを迷う事なく放出しながら「僕っすか?」と答えていた。
社長「そう。俺の都合がつかんから行ってくれ」
僕は普段、東京出張など行かせてくれんのに
八ヶ岳は行けってか・・とか思いながら
「分かりました」と答える。
渋々、了承して目的地までの路線を
鼻歌交じりに検索しだす。車ないからね・・・
「むはっ!」
思わず米粒と玉子焼きがコラボレートした内容物を噴出しそうになった。
なんと新幹線、特急列車、在来線を乗り継いで約5時間半もかかるではないか。
東京のジョ○ーちゃんに行ってもらえばいいのに、と
ぶつくさ言っているその横で当の社長は何やら電話でスケジュール調整をしている。
「むむ、うまく調整がつけば行かなくて済むかも・・」と
淡い期待を寄せる。
「がんばれ、がんばれ!社長!」
この時ばかりは真剣に社長を応援した。
・・・そして
社長「俺も八ヶ岳行くわ」
心の中で思わず「サァーーー!」と
愛ちゃんばり掛け声と共にガッツポーズ。
しかし違和感が・・・
「ん?俺も・・だって??」
僕は恐る恐る聞いた。
「ぼ、僕も同行ですか?」
社長「おー」
「なにににに!!」
さっきより状況が悪化したような・・・
なんだか泣けてきた。。
しかも社長の車で行くんだってよ。
当日、社長は颯爽と約束の時間10分オーバーで待ち合わせ場所にやってきた。
これからゴルフにでも行きそうな格好で・・
僕は心の中で「うわ、なんじゃこりゃ」と悪態をついたが
外側にはそんなことはおくびにも出さず
「おっはよーございまーす!お洒落ですね!」と元気良く挨拶。
さすが僕。大人だ。
前日から社長には僕がSPD(スーパーペーパードライバー)
タイトル保持者である事をそれとなく伝えていたので運転は免れた。
大事な車をオシャカにされたくないだろうからそれが最善の策だ。
それにわざと事故るかもしれんしな。ぶひひ!
んん・・!すまん、そんな事恐くて出来ねぇよ・・・
僕だって我が身がとてつもなくかわいいんだ。
さぁ、社長との約5時間に渡るランデブーの始まりだ。
「ぶひー、ぶひー・・・」
早速、息が詰まってきそうだぜ。
電車じゃないから寝たふりが出来ねぇ。
なんたって運転手が社長だ!
ここで寝てしまえば痴漢をした奴がロリっこ倶楽部とか読みながら
「反省してます」と言い放つぐらい危険だ!
僕はあまり話しかけられたくないので
大した景色など広がっている訳でもないのに
「ほほ~」「う~む」とあたかもその景色が
素晴らしいかのように感嘆の声を上げながら外を眺めていた。
確実に「こいつはアホだ」と思われただろう。
挙句の果てには
大学ノートを取り出し、日記を書き出す始末。
気持ち悪くなった・・・
作戦失敗。。
苦し紛れの小技を繰り出しながら
なんとか苦行を耐え忍ぶ。
もう少しで悟りが開けるところだったよ。
僕は「今日一日の我慢だ」と言い聞かせ耐える。
そんな折、思いがけず社長からパトリオットミサイルが発射される。
「今日、泊まって行くから」
「なにににに!?」
予想外の展開。
頭から万国旗がポーン!と飛び出たね。
間違いなく。
意気消沈しながらも営業を終え、ご飯を食べる。
僕は精神的被害を最小限に抑える作戦に打って出た。
社長がマッサージに繰り出した隙に僕は自分を強制終了(就寝)させた。
実に早業、10時半の出来事。
かっこよすぎる。
のび太を超えた瞬間。
旅行でもなんでもそうだと思うんですけど
気心知れた人じゃないと丸一日でも
一緒にいるのはかなり重労働ですよね?
ホンマ、ごっつ疲れたわ・・・
あっ、でも晩御飯を奢ってくれてありがとう。
でも以後、同行出張は出来れば勘弁して下さい。
一人でできるもん!
家を尋ねて三千里
最近、咳をすると腰に響きます。
いそ汁です。
「僕のお家はどっちだろう?」
僕は大学時代、テニスサークルに属していて
夏合宿だ、大会だとそれなりに青春していたわけだが
その中で当然、酒はいろんな場面で付いてまわる。
そんないつもあるような飲み会の中でも激しい飲み会の1つ
「追いコン(追い出しコンパ)」での出来事。
相も変わらず安いイッキのコールがあちこちで頻発している。
その中で当然、僕も気分よく呑んだくれる。
何杯呑んだか最早、分からない。
いや、誰も把握していないだろう。
ぎゃーぎゃー騒ぎながらの酒は格別にうまい!
雰囲気にも乗せられグイグイ飲み干していく。
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ここで説明しておこう!
いそ汁は酒を短時間で
多量に摂取した場合、
約2時間で電池切れの状態となり
眠りに落ちる、又はテンションダダ下がりの傾向にある。
【いそ汁大辞典(仮称)】より抜粋
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やがて一次会もお開きとなりみんな、二次会へと向かいだす。
当然、僕も参加することにしていた。
時刻はすでに12:00近く。
半分閉じかけの目でヘコヘコ歩いていく。
後で後悔したのだが、着いて行った人物が悪かった・・・
なんと着いて行っていた人物が暗闇に見事に同化して見失ってしまったのである。
つまり夜の闇と彼の肌の黒さが天然の隠れ身の術を
この現代の世に呼び起こしたのだ!
半分、閉じかけの僕のオメメを差し引いてもびっくりするぐらい同化したのだ!
まさに平成の忍者・・・
・・・
僕「2次会の場所知らんのぉ」と呟く。
この時点では大して焦っていなかった。
なんたって文明の利器、携帯電話があるから。
早速、適当にメンバーに電話を掛けてみる。
・・・
「電波の入っていない場所か、電源が入っておりません」
僕の聞き慣れないかわいらしい女子の声がする。
僕「うぬ?」
誰に掛けても同じ声が聞こえる。
京都河原町にぽつんと佇む僕。
しばし考えて(ホントは酔ってて多分考えてない)
「・・・しょうがない、帰ろ」
闇金のキャッチコピーのように即断即決即帰宅。
果たして電車に間に合うか!?
そこでは衝撃の事実が・・・
「桂までしか行かへんやん・・・」
(お家はもっと先なのさ)
でも何故か乗車する、僕。
脳みそとろけてたね、確実に。
桂まで来たがこれからどうしよう・・・
もはや前にも後ろにも行けない中途半端な状態。
早速、途方に暮れる。。
そこにタクシーの運ちゃんが獲物を見つけた肉食獣のように近づいてくるが
お金が2,000円しかない事を伝え追っ払う。
(なぜ着払いを選択しなかったのか・・)
そして決断
「歩こう」
何回目か忘れたが、脳みそとろけてたね。
僕は方向音痴を自認しているため線路沿いをひたすら歩くことにした。
だから道が途切れそうになるとスタンド・バイ・ミー的な事もした。
危ない。
よい子は真似したらいかんぞ。
ひたすら歩く。歩く。歩く。
なんだか泣けてくる・・・
途中で鍵のかかってないチャリンコをGETし高槻を目指す。
とうとう国道171号線沿いのジャスコが見えてきた。
「あ~長かった・・あと少しだ。」
感動しかけたその瞬間
ピピー!!
「そこの自転車止まりなさい!」
・・・
捕まりますた。
どうせならもっと手前で捕まえてくれよ。
うう、涙で前が見えないや・・・
時刻は午前5時過ぎ。始電が始まる時刻。
「京都で夜明けを待てばよかった・・・」
パクッた自転車を指差した無様な写真を撮られて釈放。
まだ20歳前だったので前科は付かない。不幸中の幸い。
酒臭さ満開であったにも関わらず酒のことには全く触れない警察官。
ある種の優しさなのか?
酒を飲んでるときこそ適切な判断を。
二度と夜、鬼○の後には着いていかない!
非日常の中の楽しみ
かつて遠足のおやつにうまい棒30本持って行った事があります。
しかも全てめんたいこ味。
口の中がイカれるかと思ったね。
いそ汁です。
金縛り・・・
簡単に言うと体は寝ているのに脳みそが
なんの目的か知らんが起きている時におこるらしい。
言わば、心と体の幽体離脱。
反対の現象が夢遊病か?
頭じゃ分かっているがいざなってみると恐い。
・・・
否!めちゃくちゃ楽しかった。
僕の場合。
だってね、意識ははっきりしているのに体はピクリとも動いてくれないの。
まさに非日常の出来事。
類似体験をしたかったら子供の頃、よくやった、アレ!
そう、わざと足やら腕を痺れさせて
自由に動かない手足の感覚を楽しんだアレと同じようなもんですわ。
ちょっと違うか・・・?
遡る事、3年前。
僕は「今日も疲れたわい」とテレビに話しかけながらベッドに寝っ転がっていた。
そしてテレビを楽しむことなく、そして付けっぱなしのまま
綺麗にカウンターを喰らったボクサーのように静かに倒れて落ちた。
何時間後か分からないが意識がふっと甦る。
テレビからはザーザーと砂嵐の音が聞こえる。
「消さな・・・」と思って
脳みそが筋肉部隊へ指令を送る。
脳みそ「さぁ動け!我が下僕どもよ!」
筋肉「・・・」
あれ、動かない・・・なんで?
まさか従順なはずの筋肉部隊が反乱か!?
某シュミレーションゲーム風に言うと忠誠度が限りなく0に近い状態。
命令なんて聞きゃしねぇ。
それにしてもどうにもこうにも動かない。
感覚的に言うと力が入らない状態。
「はうあ!これが噂の金縛りってやつか!」
目が開いているのかどうかも、
そして呼吸してるかどうかもイマイチ分からん不思議な感覚。
体は究極に重く感じる。
こりゃ昔の人が金縛りを霊的なものと信じて疑わないのも無理がないと思った。
感覚だけが飛びぬけて研ぎ澄まされていくようだった。
なんか超音波みたいな音も聞こえてくるのね。
動けない事はかくも重大な事なのか・・・と物思いに耽っていると
「クララが立った」と
やり終えたRPGのレベル上げぐらい
途方もなくどうでもいい事がポンと浮かび、一人でウケる。
でも口元は全く動いていなかった・・と思う。
はっきり言って気持ち悪い蝋人形のようだっただろう。
金縛りを楽しんでいる最中、いろんな映像が映し出された。
もそもそ蠢く黒い影からなんかヌメヌメしてそうな女性の顔まで・・・
うんうん、僕の脳みそは想像力が非常に豊かなようだ。
あれから一切、金縛りはない。
久しぶりに金縛りにあってみてぇな。